情報系のべんきょう

情報系のノートを作ります.ビギナー向けでは無いです.

第7章 IoT情報セキュリティ

7-1 IoTにおける情報セキュリティ

p285 セーフティとセキュリティ

従来より組み込み機器には誤動作や事故により人や環境に被害を与えないよう安全性を高める配慮がなされており,このような設計の考え方をセーフティ設計または機能安全設計という.自動車の設計を例に挙げると,交通事故による衝突の際エアバックを作動させてドライバーの怪我(被害)を軽減させる配慮がなされている.

これに対して,セキュリティにおける被害は機器やシステムへの不正アクセスデータ改ざん等により誤動作や予期しない停止が想定される.2015年米国自動車メーカーのある車載システムではハッキングによりこれを遠隔操作できることが指摘され100万台以上のリコールにつながった.

p285 情報セキュリティの分類

一般に情報セキュリティは物理セキュリティと論理セキュリティに分類される.

物理セキュリティは,建物や設備の防災,防犯データの保存,安定した電源供給や通信環境などを対象とする.モバイル通信でネットワークに接続するIoTデバイスの場合SIMカードが盗難されて他のデバイスで悪用されるケースが挙げられる.もし電話番号の認証のみで接続できるシステムがあれば,盗難車がサーバ内の機密情報に不正アクセスできてしまう恐れがある.

論理セキュリティはさらに2つに分類され,システムセキュリティと人的セキュリティがある.システムセキュリティはITシステムを対象にしており,暗号技術,認証技術,アクセス制御等で構成される.一方,人的セキュリティとは組織的にセキュリティ確保に取り組む体制作りのことで,セキュリティーポリシの策定や人材の教育訓練等を指す.

p286 情報セキュリティの要件

情報セキュリティを満たすための3大要件として機密性完全性可用性がある.

(1)機密性(Confidentiality)

情報資産に対して許可されたものが権限の範囲内でアクセスできることである.

(2)完全性(Integrity)

情報資産が破壊,改ざんされていないことである.

(3)可用性(Availability)

情報資産やITシステムに対して必要な時に中断することなくアクセスできることである.

企業で利用される情報システムは一般に機密性が重視されるが,IoTシステムでは利用用途によっては可用性が最優先されることがある. 工場のラインといった制御システムが代表例である.

3大要件の頭文字をとって一般的な情報システムの優先順位はCIAとされ制御システムのAICと対比される.

p287 リスクへの対処

IoTデバイスにおけるリスク低減の対策として,フールプルーフフォールトレランスといった考え方を適用できる.

フールプルーフとはシステム設計の考え方の1つで,システムに対する知識や経験が不足していても,誤操作をしたときに事故に至らないようにすることである.

フォールトトレランスとはシステム設計の考え方の1つで,システムの一部に障害が発生しても,システム全体を停止することなく継続運用することである.

7-2 脅威と脆弱性

p289 ネットワークスキャン,パスワードクラック

サイバー攻撃に際し,攻撃者は攻撃対象に対する組織のネットワーク情報を収集することから始める.ホストやネットワーク機器の製品名,バージョン,IPアドレス,稼働中のサービス等を特定することをネットワークスキャンという.中でも攻撃対象のホストに対して,通信可能なポートを探索し,アプリケーションの種類やバージョンを確認する攻撃をポートスキャンという.ネットワークスキャンを実装するツールは多数公開されており代表的なものにnmapと言う無償のソフトウェアがある.

ネットワークスキャンの対策としてはファイアウォールのフィルタリングルールにより特定のサービスのみ接続を許可することなどが挙げられる.

攻撃者がネットワークスキャンにより攻撃対象のホストを特定すると,次はOSやアプリケーションのパスワードを奪いホストへ侵入する事が想定される.このパスワードを奪う行為をパスワードクラックという.

代表的な手法であるブルートフォース攻撃は,IDまたはパスワードのいずれかを固定して,特定の文字数や文字の種類の中ですべての組み合わせを試す方法である.特に文字長が短く文字の種類が少ない場合に狙われやすいといえる.ブルートフォース攻撃のほかに,ユーザID等の利用者情報からパスワードを推測する手法や,情報システムで一般的によく使われそうなパスワードを試していく手法(辞書攻撃)もある.パスワードクラックはいずれの手法も固定式のパスワードで認証するシステムで有効なため,対策としてはアカウントロック機能の設定,ワンタイムパスワードや生体認証の導入が挙げられる.

p291 バッファオーバーフロー

CやC++はプログラムの実行中に,データを保存するためのまとまった領域をメモリ上に確保する.この保存領域をバッファと呼び,バッファサイズを超えたデータが入力されると,バッファオーバーフロー(BOF)と言う事象が生じる.プログラムの脆弱性であるBOFは,古くからサイバー攻撃の標的にもされ,遠隔からの管理者権限奪取やマルウェアのダウンロードなど,重大なセキュリティ事故を引き起こしてきた.

p292 マルウェア

マルウェアとは,コンピュータウィルスやワーム,トロイの木馬,ボット,スパイウェアを総称した呼び方である.コンピュータがマルウェアに感染すると,利用者の意図に反した動作が実行され,データの破壊や改ざん,他のコンピューターへの感染,外部からの遠隔操作といった攻撃により,深刻な被害を受けることになる.対策としては,ファイアウォールで不要なポートを遮断すること,ウィルス対策ソフトを導入し最新のウィルス定義ファイルを適用すること,OSやソフトウェアのセキュリティパッチを当てる事が挙げられる.

7-3 セキュリティ対策技術

p294 認証

認証とは,あらかじめ決めておいた人あるいはモノが,情報やその他リソースにアクセスすることを許可する行為である.

ICチップ認証は人が物理的なデバイスを携行して認証する方式である.ICチップの中にデータを保存できる領域があるため,人が記憶するパスワードよりも強固なパスワードを保持できる.その反面,デバイスの紛失や盗難の危険性を伴うため,紛失や盗難発生時のユーザの問い合わせ窓口や,認証機能の無効化手続きなど,運用体制を築く必要がある.ICチップを搭載したICカードには接触型と非接触型があり,接触型としては携帯電話用のSIMカードなどがある.非接触型としては交通機関の乗車カードや社員証に使われるFeliCa規格などがある.

生体認証とは身体的な特徴を利用した認証方式である.古くから指紋が使われているが,最近では顔や声紋,虹彩,静脈パターンを用いることもあり,偽造が難しく忘れたりなくしたりすることもない,という特徴がある.特に虹彩は年齢を重ねても変化がないと言う点がメリットである.ただし他人を誤って本人と認識してしまう他人受け入れ,又は本人を拒否してしまう本人拒否という問題が発生する恐れもある.

FIDO仕様では公開鍵暗号化方式と生体認証を組み合わせて,パスワードレスのオンライン認証の標準を策定した.ユーザはデバイスに生体情報を登録し,オンラインサービスにそのデバイスを登録しておけば,サービスログイン時にデバイス上で生体認証するだけで済ませられる.

p295 暗号化

暗号化とは,データを意味のある情報として読めないように変換することである.暗号化される前のデータを平文と呼び,暗号文から平文に戻すことを復号という.

共通鍵暗号化方式は,暗号化鍵と復号鍵が同一で,データを送信する側と受信側との間で鍵を共有する方法である.2者間で事前に1つの鍵を共有しておけば両者で暗号化と復号を行うことができる.ただし一般に n者間で共有する時は \dfrac{n(n− 1)}{2} 個の鍵が必要で管理が大変である.現在はAESという標準を利用することが推奨されている.

一方,公開鍵暗号化方式では,異なる暗号化鍵と復号鍵のペアを作り,暗号鍵を広く公開し,復号鍵は自身で保管する.公開しておく鍵を公開鍵,復号に用いる鍵を秘密鍵と呼ぶ.公開鍵を用いて暗号化された暗号文は,秘密鍵を持つ者だけが復号できるという仕組みである.公開鍵から秘密鍵を推測することは非常に困難とされている.公開鍵暗号化方式の代表的な実装手法にRSAがある.

公開鍵暗号化方式は共通鍵暗号化方式に比べ,演算が複雑で処理に時間がかかるという問題がある.

データの本文そのものには処理時間の短い共通鍵暗号化方式を利用し,共通鍵の配布には公開鍵暗号化方式を利用する方法が出てきた.これをハイブリット方式と呼び,SSLなどのセキュリティプロトコルなどインターネット上で広く用いられている.

デジタル署名は送受信するデータの改ざん検知に利用される技術で,ハッシュ関数公開鍵暗号化方式を用いる.ハッシュ関数とは任意の長さの入力データから固定長のデータを出力する関数で以下のような性質を持つ.

・一方向性:ハッシュ値から入力値を求める事は困難

・第二原像計算困難性:ある入力値とハッシュ値から同じハッシュ値を出力する別の入力値を求める事は困難

・衝突困難性:同じハッシュ値を生成する異なる2つの入力値を求める事は困難

7-4 IoTのセキュリティ対策

p299 IoTシステムのセキュリティ対策

(1)耐タンパ性

耐タンパ性とは,物理的にデバイスを盗まれた時や不正アクセスを受けたときの,内部データやソフトウェアに対する解析の困難さをいう.具体的には,外部から回路パターンを解析されないように筐体内を樹脂で充電したり基盤をコーティングすることで防御される.また,外部から想定外の信号を検知すると不正な読み出しと判断し,メモリ内のデータを自動で消去する.

(2)セキュアブート

バイスの電源投入時にデバイス内のソフトウェアが正規品であるかどうかを検証し,問題がなければ起動を許可し,あらかじめデジタル署名を保持したソフトウェアのみ実行できるようにする仕組みである.もともとはパソコンを高速で安全に起動シャットダウンするUEFIの一機能である.UEFIコンソーシアムによって策定された.

(3)FW(Fire Wall)

FW(ファイアウォール)は,インターネット側から不正なアクセスを防御するネットワーク機器である.FWは,外部との境界であるゲートウェイ機器,ルータなどの手前に設置され,フィルタリングルールに基づいたパケットの追加,拒否,破棄を行う.IPパケットの宛先と送信元のIPアドレスTCPまたはUDP,サービスのポート番号を用いてフィルタリングルールを設定する.

(4)IDS(Intrusion Detection System)・IPS(Intrusion Prevention System)

IDS(侵入検知システム)は多数の攻撃パターンをデータベースとして持ち,通信路を監視して攻撃をリアルタイムに検知するシステムである.主にネットワーク上のパケットを監視するNIDSと,WebサーバやDBサーバなどのホストに直接インストールされるHIDSがある.

NIDSの持つ侵入検知機能に加え,検知したパケットをリアルタイムに遮断するシステムをIPS(侵入防御システム)と呼ぶ.

(5)WAF(Web Applications Firewall)

FWやIDS,IPSだけではアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃,例えばクロスサイトスクリプティングSQLインジェクションなどに対処することができない.WAFはウェブアプリケーションにおいてHTTP通信などを解析し攻撃を検知,防御する.

(6)VPN(Virtual Private Network)

VPNとは,インターネットなどの公衆網において暗号化処理などを行い,仮想的なプライベートネットワークを実現する技術である.インターネット上で安価に構築するVPNをインターネットVPN,通信事業者が自前のIPネットワーク上で提供するVPNサービスをIP-VPNと呼び区別される.

インターネットVPNにはIPsec-VPNSSL-VPNがある.

(7)マルウェア対策

マルウェアの代表的な対策を以下に示す.

・OSやアプリケーションのバージョンを最新化しセキュリティパッチを適用する.

コンピュータウィルス対策ソフトを導入しパターンファイルを最新の状態にする.

・万が一に備え定期的にデータをバックアップする.

7-5 標準化動向・法制度

p308 個人情報保護法

インターネットの普及に伴ってプライバシー保護が重視されるようになり,2003年5月に個人情報の保護に関する法律が成立した.プライバシーを尊重し,信頼されないように保護するシステム設計を,概念的に「プライバシー・バイ・デザイン」という.

最近では,個人に関わる情報量の増加と照合技術の発展により,思わぬ情報の突き合わせで個人を特定し得るケースが出てきた.このようなビックデータ時代の到来に伴い,内閣IT戦略本部ではパーソナルデータを安全に利活用することなどを目的に,「パーソナルデータに関する検討会」を発足した.2015年9月には個人情報保護法が一部改正されている.主な規定は以下である.

(1)個人情報の定義の明確化

従来の個人情報に,指紋認識データや顔認識データなどの身体的特徴,及び旅券番号や免許証番号などの符号的情報を追加

(2)要配慮個人情報の新設

人種や信条,病歴など機微情報の取得について,本人同意を原則義務化

(3)第三者提供データの加工方法の規定

個人情報の復元や個人の特定につながる情報付加を禁止する条件で,本人の同意なしに第三者提供が可能

(4)第三者機関の新設

事業者の個人情報の取り扱いに関して,監視監督する「個人情報保護委員会」を内閣府の外局に設置

(5)グローバル化への対応

外国事業者への第三者提供など,国家間で個人情報を取り扱う場合の規定を整備

p309 サイバーセキュリティ基本法

2014年11月サイバーセキュリティ基本法が制定され,我が国のサイバーセキュリティを推進する取り組み方針が打ち出された.

内閣にはサイバーセキュリティ戦略本部を設置し,内閣官房には事業事務処理を適切に行う内閣サイバーセキュリティセンターNISCを設置した.2016年7月,総務省及び経済産業省が共同で開催する「IoT推進コンソーシアムIoTセキュリティワーキンググループ」では,IoTセキュリティガイドラインver1.0を策定した.

規定されている基本的な計画は

・サイバーセキュリティに関する施策の基本的な方針

・国の行政機関等におけるサイバーセキュリティの確保

・重要インフラ事業者等におけるサイバーセキュリティの確保の促進

がある.

参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

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第6章 IoTシステムのプロトタイピング開発

6-1 IoTプロトタイピング開発検討概要

p232 プロトタイピング開発

プロトタイピング開発とは,一般に実働するモデルを早期に試作する手法とそのプロセスのことを意味し,製品開発の設計段階での事前検討として位置づけられる.その目的・効果として,モデルの作成と検証設計方法の妥当性の検証,一部機能の先行検証,後工程での出戻り削減,開発工数の削減などが挙げられている.

p232 メイカームーブメント

世界的に普及し始めたDIYやメーカームーブメントの影響もあり,誰もが簡単に安価で短時間でものづくりできる環境が整ってきた.さらにオープンソースハードウェアのマイコンボードArduino(アルディーノ)や,安価で高機能なOSを持ったコンピューターボードのRaspberry Piなどの出現も,IoTシステムプロトタイピング開発を後押しする要因になっている.

p236 データフォーマット

センサデータをIoTサーバにアップするときの検討すべき項目の1つにデータフォーマットが挙げられる.CSVXMLさらにJSONのいずれかが多く使われるようになってきている.

CSVのメリットはデータがコンパクトで処理時間が早いこと,デメリットは構造化データに弱いことである.

XMLのメリットは構造化データに対応し長期間の保存が可能であり,トランザクション処理向きであること。デメリットは処理時間がかかることや,レコードサイズが大きいことである。

JSONのメリットは構造化データに対応し長期保存が可能であり,エスケープ処理に対応していることである.デメリットはやや処理時間がかかることや,CSVに比べてレコードサイズが大きいことである.

6-2 IoTプロトタイピング・ハードウェア環境

p240 オープンソースハードウェア

IoTシステム・プロトタイピング開発で利用できるハードウェアはオープンソースハードウェアの概念の普及によって増加している.オープンソースハードウェアとは回路図を公開したハードウェアマイコンボード等のことで他社に無償の統合開発環境を提供し広く普及展開していくことを目指している.IoTシステムのプロトタイピング開発でもこの概念が広く取り入れられるようになっている.

p241 GPIO,シリアルポート(UART,I2C,SPI)

IoTシステムに関するハードウェア構成として,センサ類やアクチュエータ類,それを制御するマイコンボードやコンピューターボード,さらにインターネット接続通信機器類がある.

これらハードウェア群の様々な組み合わせによる接続・連携の手段は有線によるものがGPIO,PWMアナログ入力やシリアルポート(UART,I2C,SPI等)による通信となり,無線(ワイヤレス)によるものがIoTエリアネットワーク無線通信と広域通信網(WAN)のモバイル通信のいずれかになる.

p246 ワイヤレス通信機器を使う上でのポイント

(a)電源供給

ほとんどのワイヤレス通信機器はセンサやアクチュエータを利用するにあたり,電源(バッテリ)供給への配慮が必要になる.プロトタイピング開発においても,何年間または何ヶ月間使えるか,あらかじめ通信状態やセンサ値取得状態時での消費電力を考慮した上で,電源供給能力(電源能力:wh)を計算することが必要である.

(b)電波強度

電波強度にはアンテナの種類や接続時の向き(指向性),互いの機器間の遮蔽物や障害物などが関係してくる.アンテナ特性等については事前にわかることもあるが,利用する現場によって電波強度が異なってくるため,遮蔽物・障害物はできるだけあらかじめ調査しておく必要がある.特にワイヤレス通信においては,電波強度は水分によって減衰することから,秋や冬には電波がよく通っていたとしても,春や夏など樹木が生い茂る季節になるとなかなか電波が届かないといったこともある.

(c)通信距離

IoTエリアネットワーク用の通信機器は同じプロトコルの通信機器同士で繋がる.最近では,Wi-Fiを始めBluetoothZigBee,EnOcean,Wi-SUN,Z-Wave,Dustと様々な規格やプロトコルに準拠した機器が存在する.これらの通信距離は機器の種類によっても異なるが,近距離(10m以内)から中距離(100m以内),それに遠距離(1kmまで)と通信距離に応じた仕様のものがあり,それぞれ使い分けて利用することが必要となる.

(d)通信頻度と通信エラー

ワイヤレス通信で送受されるデータの内容は,単にスイッチのオンオフを制御するものもあれば,センサ値さらにはカメラ画像などの大量データに至るものなど様々である.少量のデータ受信だとさほど通信エラー処理は問題ないが,大量なデータであればエラー処理も複雑になってくる.

(e)トポロジー

IoTエリアネットワークのワイヤレス通信では,通信機器間のトポロジ構成が重要となってくる.IoTシステムではこのトポロジを検討する目的でプロトタイピング開発を行う場合も少なくない.トポロジを考える場合には,現場の利用環境や機器設置場所,機器間の親子関係,中継機の配慮,通信距離,消費電力などが関係し,最適化を目指す必要がある.

p247

(a)WAN上通信

IoTデバイスとしては,できるだけ出費を抑えるためにWAN用の通信機器を利用は避けたいところだが,屋外や山間部等などに利用される場合はほとんどWANの使用が必須となってくる.また屋内でも利用するケースとして,社内LANとの接続を断ち切るためのセキュリティ対策や,電源ケーブルやLANケーブルなどの配線工事をなくす対策などを目的とした仕様がある.

(b)(c)WANの利用目的

インターネットと直接つながることが優位点となる.

(c)WAN上のモバイル機器

IoTシステムのプロトタイピング開発で使えるWANのモバイル機器は,安価なSIMカードを利用する3G通信の利用が主流となっている.現在この3G通信モジュールを使ったプロトタイピング機器としては,Arduinoとその互換機で使える3Gシールド,3GIM,ラズベリーパイ上で使える3GPIといったものがある.

6-3 IoTプロトタイピング・プログラミング事例

省略

6-4 IoTプロトタイピング・ソフトウェア環境

p267 IoTサーバサイドのソフトウェア開発環境

(1)PHP

利点は,多くのPaaSタイプのクラウドサービスで標準でPHPが提供されているため,簡単に始められる.また,WebUIのフレームワークが数多く提供されており,見栄えの良いWeb画面を作りやすい.しかし,ブラウザサイドの処理はJavaScriptで書く必要がある.

(2)JavaScript

利点は,ブラウザサイドの処理を含めて全てJavaScriptだけで開発できることである.また,JavaScriptと相性の良いNoSQLデータベースであるMongoDBを簡単に利用できる.一方で,コーディングに慣れが必要であることが欠点である.また,大規模開発の際は多言語に比べて厳密にルールを規定し,順守する必要がある.

(3)Ruby

利点は,短く可読性の高いコードが書けることである.一方で,PHPJavaScriptに比べてユーザが少なく,参考資料が少ない.

6-5 IoTプロトタイピング開発の課題・対策

p274 センサ値の精度,誤差,誤動作

取得したセンサ値は,正確な値との間に誤差が生じる.例えば,温度センサではセンサ部品の個体差や供給する電源電力の誤差,配線ケーブル長,取得時間間隔などで差異が出ることもある.光センサでは,太陽光の環境下で捉えるものと屋内照明機器の環境下で捉えるものとで誤差の幅も大きく異なる.

その対策として,前後のデータ値と比較判断を行う処理や,数回取得して平均値を採用する処理,一部の最大値と最小値を除いた平均値を採用する処理,ソートして中央値を取る処理,などのアルゴリズムを検討するとよい.

p275 センサ値取得の間隔とタイミング

センサ値の取得間隔は,IoTデバイスの目的に応じた内容で調整対応する必要がある.センサ値を常時取得したい場合もあるが,変化がそれほどなければ待機時間を設けてセンサ取得を中断することも必要である.

p275 センサ値の取得時刻

多くのIoTデバイスでは,センサ値を取得した時刻と,IoTサーバなどにデータをアップロードした時刻が異なる場合がある.正確なセンサ値取得時刻を必要とする場合は,IoTデバイスに正確な時刻が取得できる機能を持たせ,IoTサーバにこれらをアップするだけでなく,IoTデバイス自体にローカルなメモリ機能を持たせておく必要が出てくる.センサ値を取得するまでに時間がかかる場合は,時刻を取得してセンサ値を取得するのではなく,センサ値を取得できた段階で時刻を取得する順番で取得時刻を記録するといった配慮も必要となる.

p275 センサのキャリブレーション

センサの種類によっては,キャリブレーション(初期設定)が必要である.キャリブレーションを行わないままでいると誤差が発生し,正確なセンサ値を取得できなくなっていく.具体的にどのようなキャリブレーションをするかは,センサの使用を確認して設定することが必要となる.

参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

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https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809

第5章 IoTデバイス

5-1 IoTデバイス

IoTデバイスの役割は,機器やセンサをネットワークに接続し,機器やセンサからのデータを収集したり,機器の遠隔操作を可能にすることである.

IoTデバイスは組み込み型と独立型に分けられる.

(1)組み込み型

IoTアプリケーションのみを装備するIoTデバイスである.監視,制御対象の機器にネットワーク接続機能を実装し,IoTサーバにデータを送信したり制御データを受信したりする.

組み込み型の事例は,スマートフォンWebカメラ,ネットワーク機能内蔵の複写機,自販機,ATM,スマートメータ,情報家電機器などがある.

(2)独立型

センサ,アクチュエータなどのデバイスをアプリケーションに合わせて選択,接続する.もしくは,IoTエリアネットワークを介してセンサ,アクチュエータとデータを授受する.

ラック構造の産業用パソコン,工場などで使用されるプログラマブルコントローラやプロセスコントロールシステムもIoTアプリケーション,IoTサービスプラットフォームを装備した場合は独立型に相当する.


5-2 センサの基礎

p189 センサに利用される物理的効果

センサは,様々な物理的効果を利用して検出対象の情報を収集し,最終的には電気信号に変換して符号化しサーバに送る.検出対象によっては,他の物理量に変換した後,さらに電気信号に変換するものもある.

機械量

回転を検出するセンサでは,回転軸に歯車を取り付け,歯車の回転によって生じる磁界変化を磁気センサで検出する磁気式回転センサがよく用いられている.MEMS加速度センサでは,加速度で生じる慣性力を電極の変異に変換して静電容量変化として検出する.

フォトダイオードは,光を半導体に照射したときの光起電力効果を光電流と言う形で出力する.ピエゾ抵抗式の圧力センサや加速度センサでは,圧力や加速度の印加により薄膜構造のダイヤフラムや梁に生じる応力変化をピエゾ抵抗効果により抵抗値変化に変換し,電気信号に変換する.

人の動きなど温度の時間的な変化として焦電効果により電圧信号に変換する焦電式センサ,温度差をゼーベック効果により起電力として電圧信号に変換する熱電対やそれを複数直列接続したサーモパイルなどがある.また抵抗値の温度によって変化することを利用して温度の検出を行うサーミスタや,半導体のpn接合の温度依存性を利用して温度を検出するIC温度センサなどもよく利用される.

磁気

コイルを用いて磁界の時間的変化を電磁誘導の法則により起電力に変換して検出する電磁ピックアップ,ホール効果を利用して磁界に比例した電圧信号を得るホール素子,磁気抵抗効果による抵抗値変化を利用して磁界の向きを提出する強磁性MR素子等がある.

電気

角速度検出用振動ジャイロや共振形センサでは可動部分を駆動して変位させる必要があり,圧電逆効果や静電力を利用したアクチュエータが内蔵されており,ここでも物理効果は利用される.検出素子を自己診断するために,アクチュエータを内蔵したセンサがあり,空調,プロセス産業,機械産業,自動車,農業の分野で使われている.

p191 センサの選び方

・測定範囲,測定精度,応答性(周波数範囲)を設定する.

・設置環境条件(場所,耐候性,振動,衝撃など),測定期間(短期/長期使用)を設定する.

・電源供給,通信手段を設定する.

・センサの価格(設置,範囲,調整など),入手性,保守サービスを検討する.

p192 センサの特性例

0入力に対して,0でない出力値をオフセットという.

センサ出力は測定対象の信号に対して直線的とは限らない.測温抵抗体は2次曲線,サーミスタの半導体は対数となる.

振動などを計測する場合は,振動周波数が高くなるとセンサが応答できずにある周波数から感度が落ちてくる.ゲインが-3db(70%)に落ちた時の周波数をカットオフ周波数という.センサには,マス・スプリング系センサのように共進周波数で表しているものもある.

入出力特性の仕様値は通常,入力に対する出力の比率である感度と,入力がゼロであるときの出力であるオフセットを用いる.


5-3 各種センサ

p194 光センサ

光センサは,光を検出して電気信号に変換するセンサである.波長が下限360~400nmから上限760~830nmの領域が可視光であり,それより短い波長の光が紫外線,長い波長の光が赤外線である.

半導体(CdS,Si,GaAsなど)に光を照射すると電流が流れやすくなったり(光導電効果),pn接合で電圧や電流が発生(光起電力効果)したりする現象を利用した素子が光センサである.

光センサは,光が直進するという光線としての性質を利用して反射光を測定することにより,距離測定や形状測定に用いられる.また,光の波としての性質を用いて,光の干渉による波長レベルの精密な距離測定にも産業用で使われている.

光センサは,可視光以外にも赤外線や紫外線を検出できるものがある.赤外線センサは,赤外線LEDと組み合わせてその間や前を通るものを検知したり,家電製品のリモコンに用いられる.人体からは遠赤外線(体温に相当)が出ているので,これを測定することで人体検知や非接触式の体温測定が可能である.

紫外線センサは,太陽光に含まれる紫外線量を測定し,紫外線による日焼けや肌への影響を調べるのに用いられている.

カラーセンサは,明るさだけでなく色を識別できる.

p197 温度/湿度センサ

温度センサは,気温,体温,装置の温度,機械,ICの発熱などの測定に多く使用されている.温度センサには,サーミスタ,熱電対,白金測温体,半導体温度センサなどの素子が使われている.

湿度センサは,空気中の飽和水蒸気量に対する水蒸気量の割合を測定するセンサである.多孔性セラミックスの表面に,多孔性電極膜を整形したもの,高分子に炭素粉末など分散させたものがあり,湿度に対し抵抗が変化する湿度センサとして,前者は電子レンジに,後者はエアコンなどに使われる.

p198 ひずみセンサ

物体にかかる力を測定するために用いられ,力による微小な変形(ひずみ)を検出する.ひずみゲージとも呼ばれる.

p199 圧力センサ

液体や気体の圧力を測定するセンサで,金属製のほかに半導体製造技術を用いて作成されるセンサが多く使用される.そのほかにも,気圧や水圧の測定,自動車では吸気装置の管内圧力測定,家庭では血圧計などにも使われている.

光ファイバを用いた圧力センサでは,医療において血管内の圧力測定に用いられる.

p200 加速度センサ

おもりを板ばねで支えた構造を持ち,運動や動的な力を測定する.

自動車のエアバッグシステムにおいて,大きな加速度がかかる衝突検知用センサとして広く普及している.感度の高い加速度センサは,地震センサ,傾斜センサ,ゲーム機のコントローラにも使用されている.ジャイロセンサと組み合わせて,自動車のナビゲーションシステムや航空機,ロケットの慣性航法にも使用されている.

p201 ジャイロセンサ

角速度を測定する.

船や航空機,ロケットの自律航法に使用されている.加速度センサと組み合わせて,トンネル内のカーナビ,デジタルカメラやビデオカメラの手ぶれ防止,ロボットやドローンの姿勢制御にも用いられる.

p202 GNSS(Global Navigation Satellite System)

GPS(Global Positioning System)はGNSSの一種であり,地球の周りを回っているGPS用の人工衛星を利用して現在位置を測定するシステムで,スマホの地図上の位置表示や自動車のナビゲーションシステム,地形の精密測量,船舶や航空機の航行に広く利用されている.

GPSによる測位は4つ以上のGPS用の人工衛星の信号を受けることにより高精度に行うことができる.GPS人工衛星には極めて正確な時計が搭載されており,スマホなどに搭載されているGPS受信機が衛星から受けた信号の時刻を知ることにより,衛星までの距離が正確に計算される.

p203 超音波センサ

超音波は.音波に比べて波長が短く直進性が良いので,対象物から反射して戻ってくるまでの時間を測定することで,対象物までの距離を測ることが可能である.

空中用超音波センサは,超音波の発信と受信が可能な圧電素子を用いており,超音波パルスを発射して物体から反射されて戻ってくるまでの時間を測定することにより,物体までの距離を求める.駐車に使われるバックソナーやロボットの障害物検知センサなどに用いられる.

水中では音波は減衰が小さいため,水中測定の有効な手段となり,魚群探知機や水中探査装置,水中ロボットに利用される.

医療分野では超音波診断装置に応用されているが,これは人体の臓器の超音波に対する音響特性の違いによる販社を利用している.

超音波ドップラー血流計は血液中を流れる赤血球で反射される超音波の周波数が元の周波数と異なるというドップラー効果を用いており,体外から血流を測定できるので,動脈硬化の診断などに用いられている.

金属などの個体では,超音波探傷装置として内部の傷の非破壊検査に使われている.

p204 磁気センサ

一般的な磁気測定,電流の非接触測定,モータの回転制御,車輪の回転速度測定などに使われている.

磁気センサの中でも,ホール効果を用いたホール素子がある.ホール素子は,磁気測定,電気自動車のモータに流れる電流を図る非接触測定,ブラシレスDCモータの回転制御などに用いられている.自動車では,ABSやTCSなどの制御にも使われている.

ホール素子のほかにもMR素子があり,ホール素子に比べて約1000倍の感度がある.

p208 ウェアラブル生体センサ

人体に装着した小型センサにより,心電,心拍,血圧,血流,血中飽和酸素濃度,体温,湿度,加速度などの身体に関する情報をえるものである.健康管理や運動のモニタなどに使われる.測定された信号はBluetoothなどでスマホなどの情報収集機器に送信される.

主に以下のようなものがある.

(1)心電計

心臓の動きにより,体表面に現れる電位差を測定する.

(2)脈拍計

LED光を皮膚内の血管に照射し,反射光の変化により脈拍を測定する.

(3)パルスオキシメータ

光センサが内蔵されたクリップで指先を挟み,透過光を測定することで,ヘモグロビンは酸素と結合している割合を測定し,血中酸素飽和度を求める.

(4)血圧計

(5)加速度計

上下左右前後の加速度を測定できる3軸加速度センサを体に装着することにより歩数や運動を同時に測定でき,活動量計と呼ばれる機能を実現できる.心拍センサや血圧計の一体化,転倒検出,GPS機能を組み合わせ,高齢者見守り用に利用が高まっている.


5-4 アクチュエータ

p210 アクチュエータ

アクチュエータは,電気や磁気,油圧,空気圧などのパワーを用いて機械を動かすものである.電気エネルギーを回転運動や直進運動に変換するモータや,直進運動アクチュエータとしてソレノイドアクチュエータ,油圧アクチュエータ,空気圧アクチュエータ,圧電アクチュエータ,磁歪アクチュエータなどがある.

p210 DCモータ/ブラシレスDCモータ

直流電圧が印加されて回転するモータであり,モータの中で最も多く使われる.これは,DCモータが大きな起動トルク,入力電圧の変化に対して直線的に回転スピードが変化する特性,入力電流に対する出力トルクの直線性,出力効率の高さ,低価格,などの特徴を持つためである.

ブラシなど機械的接点を持つため,騒音,電気ノイズ,寿命などが問題である.

ブラシレスDCモータはDCモータの欠点を解決する.ブラシが不要となり,騒音や電気ノイズが発生しない信頼性の高いモータとなり,産業機器や情報機器,家電製品などに幅広く利用されている.

p211 ステッピングモータ

モータ軸が時計の秒針のように一定の角度ずつ動く.この角度はモータ内部の機械的な構造により決められるため,高精度な位置決めが可能となる.制御方法も,直接コンピュータのデジタル信号を使って回転位置を決めるので,簡単である.

p210 ソレノイドアクチュエータ

電磁石のコイルの内部に稼働鉄心が収められた構造をしており,コイルに電流を流すことにより電磁石の力で稼働鉄心を直線的に動かすアクチュエータである.

産業用機器,民生機器,事務機器,家電機器,自動販売機などに広く用いられている.可動鉄心の動きは微小な直進運動だが,電磁力が強く応答スピードも速いので電磁弁として油,水,空気などの物体を流したり止めたり流れの方向を切り替えるのに用いられる.電磁弁は油圧アクチュエータや空気圧アクチュエータの制御自動車用燃料噴射装置の制御などに使われている.


5-5 センサの信号処理

p214 センサの構成

センサは汎用センサ部とインテリジェント化センサ部に分けられる.

汎用センサ部の検出素子で変換された電気信号は,通常は微小電圧なので信号前処理回路で増幅する必要がある.

インテリジェント化センサ部では,汎用センサ部の出力のアナログ電圧をA/D変換してデジタル化されてマイコンに入る.マイコンでは,測定レンジの設定,ノイズや応答に対するフィルタリング,演算機能,オフセット補正,製造によるばらつき補正,較正機能などが実行される.出力回路では,外部にアナログ信号を有線伝送したり,UARTやPWMなどの通信方式のデジタル信号として有線伝送したり,無線通信回路によりIoTエリアネットワークに無線伝送を行うセンサとすることもできる.

電源としては,有線の商用電源,アルカリ乾電池などの一次電池リチウムイオン電池などの二次電池に加えて,太陽光や振動などの周囲の環境から微小なエネルギーを収集するエナジーハーベスティング技術の活用も可能である.

p215 信号前処理回路

センサ素子出力信号を増幅または修正し,読み取り可能なアナログ測定信号とする回路で,OPアンプと呼ばれるアナログICを用いて設計される.

p216 A/D変換

センサからのアナログ電圧をデジタル量に変換するのがA/D変換回路である.2重積分回路がよく使われる.

A/D変換器の性能は以下で示される.

・分解能:アナログ値をデジタル化したときの最小アナログ量

・精度:アナログ量とデジタル量の理論値に対して,実際に得られる数値の誤差

・変換時間:A/D変換のスタート命令からデジタル量が決定されるまでの時間

・サンプリング周波数:1秒間にA/D変換する回数

p216 信号処理

A/D変換回路で取り込まれたセンサのデジタル量はFPGAや組み込み型のマイコン内の1データとして扱われる.

p217 出力回路

信号処理部で演算されたデジタル量をアナログ出力,シリアル出力,パルス幅変調出力に変換する.また,無線通信回路を介してネットワークに接続する.

p219 電源回路部・エナジーハーベスティング

IoTデバイスではワイヤレス通信になるため,設置環境やモバイル化によっては外部より安定な電源供給を受電できない場合,エナジーハーベスティングが必須となる.

外部から電力が供給できない場合は,バッテリーを用いてIoTデバイスを動作させる必要があるが,バッテリは寿命があるため交換にはコストがかかる.IoTデバイスを屋外に設置する場合は,動力源として太陽光発電を利用することがある.最近では振動,温度差,室内光,電波などの周辺環境から微弱なエネルギーを集めて発電し,それを電源として利用するエナジーハーベスティングが注目を集めている.エナジーハーベスティングは屋内外問わず利用ができるが,現在はエナジーハーベスティングで得られる電力は微小であるため,IoTデバイス全体を安定的に動作させる事は難しく,主にセンサモジュールを駆動させるために利用されている.また蓄電池と合わせて利用されることも一般的である.

エナジーハーベスティングの代表的な発電方式としては,熱エネルギーを利用する熱発電方式と振動エネルギーを利用する振動発電方式がある.


5-6 画像センサ

p221 画像センサ

画像センサとは,対象物を2次元平面の画像として捉えるもので,代表的なものにCCDカメラやCMOSカメラがある.

それらのカメラは,レンズを介してCCDなどの撮像素子面に対象物を投影する.撮像素子面にはフォトダイオードなどの光電変換素子がXY平面上に配列されており,その一つ一つが画素となる.画素ごとに撮影された像の明暗に応じた電荷量に変換(光電変換)される.その後,与えられた電荷量を順次読み出し構成することで画像を取り出す.このように,カメラは対象物を標本化,量子化してデジタル画像として出力する.

以上の処理を一定周期で行うことで,動画像として撮影することができる.

撮像素子は2次元に配列されているものが一般的だが,1次元に配列されているラインセンサもあり,スキャナなどに利用されている.ラインセンサの場合は,対象物が移動するか,センサが移動するかで2次元画像を構成する.

画像の解像限界は,撮像素子の画素数で決まる.画素数が多いほど滑らかな画像が得られる.同一素子で画素数が多いということは,その分画素サイズが小さくなる.これは受光面積が小さいことを意味するので,感度が低下することになる.よって,最近の素子にはマイクロレンズアレイが画素ごとに配置され,集光率を向上させている.

カラー画像を得るためには,カラーフィルタを介して光をRGBまたはCMYに色分解してから撮像素子に投影する.感度を上げたい場合は,大きな画素の素子を使うのがよい.

p222 レンズの焦点距離F値

レンズの代表的な仕様に,焦点距離F値がある.

レンズの絞りを最大まで開いたときの明るさを,そのレンズのF値といい,レンズの能力を示している.明るいレンズほど解像力があるが,焦点からずれたときのボケが大きくなる.

焦点距離 lと撮像素子サイズ Mに対して,撮影画角 \theta

 \hspace{2cm} \theta = 2 \times \arctan ( \dfrac{M}{2} \times \dfrac{1}{l} )

である.

一方でF値は,レンズ口径を Dとすると

 \hspace{2cm} F = l \times D

で求まる.

p223 画像処理

画像処理とは,画像データをコンピュータによって処理し,変形,着色,合成などの加工を行うことであり,画像の特徴の抽出,計測,分類なども含まれる.

p224 画像計測

一番単純な例は,撮影した対象物のエッジからエッジまでの画素数をカウントすることで,相対的な大きさを測れる.撮影距離やカメラ仕様などの光学条件が明確であれば画素サイズがわかり,実際の寸法が測定できる.

画像認識は,対象物の色や幾何学的特徴,HOG特徴,高次局所自己相関特徴などの特徴量を利用したり,パターンマッチングや統計的識別法,ニューラルネットワークなどの機械学習手法などを用いて行われる.


5-7 MEMS

p226 MEMS

MEMS(Micro Electro Mechanical System)とは,微小電子機械システムと呼ばれ,マイクロマシニングという半導体製造技術を使って製作されるチップを指す.圧力センサや加速度センサのうち,スマホなどに採用されている小型センサの多くはMEMSである.

MEMSでは,小型で大量に,性能の優れたセンサデバイスが製造できる.さらに,センサ回路や駆動回路,信号処理回路,インターフェイス回路などを集積化できるメリットがあるため,最近のタブレット端末やスマホなどに大量に使われている.

p226 MEMSの分類

MEMSが半導体と異なるのは機械構造体を所有するところだが,機械構造体の製造方法によって大きく2つに分類される.1つは表面マイクロマシニングを用いた表面マイクロマシン,もう1つはバルクマイクロマシニングを用いたバルクマイクロマシンである.

表面マイクロマシンは集積化MEMSに向いた製造方法である.

バルクマイクロマシンは精度の高い加工ができるが,センサ回路や周辺回路を集積化できる表面マイクロマシンの方がIoT向け用途としては主流である.


参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

難なく MCPC IoTシステム技術検定試験(中級) に合格したい

https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809

第4章 IoT通信方式

4-1 IoTエリアネットワーク無線

p118 電波特性

電波は周波数によって直進性,距離による伝搬損失,透過損失,情報伝送容量,アンテナの大きさなどが変わる.

直進性は,周波数が高いほど強くなる.

伝搬損失は,何もない空間では距離の2乗に比例して大きくなる.

透過損失は,周波数が高いほど大きくなる.

情報伝送容量は,周波数が高いほど大きくなる.

アンテナの大きさは,周波数が高いほど小さくなるので,IoTデバイスの小型化に寄与する.

p121 免許不要の無線局

電波を使う通信システムは,無線局として総務大臣の免許あるいは登録が必要だが,以下の無線局は一定の技術基準に適合している旨の表示がある場合は免許不要で利用可能である.

(1)微弱無線局

発射する電波が著しく微弱な無線局(主に322MHz以下).

(2)特定小電力無線局

総務省が指定する周波数,方式,特定の用途目的の無線局で,技術基準適合証明を取得して技適マークが表示された無線局.

(3)小電力データ通信システム

総務省が指定する周波数を使用し,送信電力が0.01W以下で,主にデータ転送のために無線通信を行うもので,技術基準適合証明を受けている無線局.

(4)簡易無線局

無線従事者による操作を必要としない簡易な無線業務を行う無線局で,技術基準適合証明を受けている無線局.920 MHz帯では登録が必要で,登録の有効期間は5年である.

p123 IoTエリアネットワークのネットワークトポロジ

(1)ポイントツーポイント型

Bluetoothなどの1対1通信で利用される.

(2)スター型

無線LANなどで利用され,混信を考慮する必要がある.

(3)ツリー型

より多くのIoTデバイスを接続できる.混信を考慮する必要がある.

(4)メッシュ型

信頼性の高いネットワークを構築できる.混信を考慮する必要がある.電力供給に制限のある小電力システムには不向きである.

p125 IoTエリアネットワークの無線種別

(1)Bluetooth

近距離無線通信規格の1つで,BLE(Bluetooth Low Energy)の規格化により,ビーコンなどの新しい分野に活用されている.

BLEは通信可能距離は短く通信速度は低速だが,ボタン電池1つで数年連続で動作させることができる低消費電力で動作する無線通信技術である.

BLEで採用されたプロファイルであるPXP(Proximity)を用いることにより,ペアリングしたデバイスとの距離を判別可能であり,これにより盗難防止などを実現できる.

Bluetoothはブロードキャスト通信が可能であり,1つの機器からの情報を一方向で不特定多数の機器に発信することが可能である.

BLEの活用事例は,盗難防止,忘れ物防止,位置検知,情報配信などがある.

(2)IEEE802.15.4

センサネットワークでは,少ないデータを低電力で伝送する無線ネットワークが求められるが,これはPANと呼ばれる.この接続規格はIEEEにより作成され,IEEE802.15シリーズとして標準化されている.

(a)ZigBee

センサネットワークを主目的とする近距離無線通信規格の1つで,PHY層とMAC層にIEEE802.15.4を採用している.無線通信距離が短く,伝送速度も低速であるが,無線機器やシステムを安価に構成でき,消費電力が少ない.

複数の無線端末がバケツリレー式にデータを中継するマルチホップ通信を採用しており,遠くまでデータを運ぶことが可能である.マルチホップを実現するネットワーク方式は,メッシュネットワークとツリーネットワークがある.メッシュネットワークは1つの伝送ルートが遮断されても別の伝送ルートを使用できる.ツリーネットワークはメッシュネットワークに比べてコストが安価である.

活用事例は,スマートエナジー,リモートコントロール,ホームオートメーション,ヘルスケア,ビルディングオートメーション,PCの入力デバイスなどがある.

(b)Wi-SUN

本体は自動メータ検針のために策定された規格である.

東京電力のスマートメータに採用されており,今後はインフラ施設や設備の監視や制御,農業用センサのデータ収集,防災用モニタリングシステムなどの分野で利用が期待される.

(3)無線LAN

無線LANの技術標準はIEEEにより作成され,IEEE802.11シリーズとして標準化されている.市場では世界中で使用可能な2.4GHz帯を使用するIEEE802.11bが先行して普及している.

802.11bでは最大伝送速度は11Mbpsだが,2.4GHz帯を使用しているので約100mの到達距離が確保可能である.しかし,電子レンジやほかの無線システムなどの様々な機器が利用可能なISMバンドを使用しているため,電波干渉を受ける可能性が大きくなる.

802.11aでは5GHz帯では電波干渉は起こりにくいが,周波数が2.4GHzに比べて高いため,通信距離は短い.

隠れ端末問題

無線LANでは複数のIoTデバイスが効率よくAPと通信することができるような仕組みとしてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)という技術を採用している。

CSMA/CAは,データを送信しようとするIoTデバイスが送信前に使用するチャネルが他の通信で使用されているか否かを受信(Carrier Sense)し,電波がない場合のみ送信を行うことで複数のIoTデバイスが一つのAPとのアクセス(Multiple Access)を可能となるように衝突(Collision Avoidance)を回避する方法である.

広い領域を一つのAPでカバーすればIoTデバイス間の距離が長くなる場合があり,他のIoTデバイスが送信した電波を距離の離れた他のIoTデバイスで受信することができずCSMA/CAがうまく機能しないことがあり,APで電波衝突が起こるためスループットが低下する.これを隠れ端末問題という.

隠れ端末問題は,送信制御のメカニズムのRTS/CTS信号を利用することで回避することができる.この方法は,送信しようとするIoTデバイスRTS(Request To Send)という短い信号をAPに送信し,APは通信可能である場合にはCTS(Clear To Send)をその IoT デバイスに送り、送信優先権を与えることで電波の衝突を回避するものである。

晒し端末問題

隣接するAPに所属する端末間が近い場合,CSMA/CAによって他のAPに所属する端末の信号を検出してしまい,送信したくてもできない状態が発生することがあり,スループットの低下が起こる。これを晒し端末問題という.

晒し端末問題は,隣接するAP間で適切なチャネルを設定することで回避可能である.

無線LANセキュリティ

下記のような対策がある.

・通信データの暗号化

SSIDのステルス性

MACアドレスフィルタリング

・ネットワーク分離

(4)近距離無線

(a)RFID(Radio Frequency IDentifier),NFC(Near FIeld Communication)

RFIDとは,ID情報を埋め込んだ無線タグから,電波を用いて近距離の無線通信を行うものである.

接触ICカードNFCと呼ばれ,広義のRFIDでもある.

RFIDの活用事例としては,工場での工程管理,航空機整備などでの工具紛失対策,市民マラソンでのタイム計測などがある.

RFIDの特徴は以下である.

・書き込み修正が可能である.

・読み取り範囲が広く,読み取り方向の自由度が高い.

・見えない場所や,ほこりなどで汚れている場合でも読み取り可能である.

・一度に複数のRFIDを読み取り可能である.

(b)トランスファージェット

データを転送したい送信側の機器を受信側の機器の数センチ以内に近づけることで高速なデータ転送が可能である.

電波状況により自動的に転送レートを落として安定した通信を行える.また,送信電力が非常に弱く,他の無線システムに干渉を与えることはほぼない.一方で,本来通信するべきではない相手にもデータを送信する可能性もあるため,通信相手機器のMACアドレスを事前登録することで対策する機能がある.

活用事例としては,公共の場所に設置したデジタルKIOSKにより,映画の予告などの大容量コンテンツや,テーマパークの電子マップをダウンロードしたりできる.非接触式であるため,劣悪な環境での利用も提案されている.

(5)その他

(a)Z-Wave

家庭及び小規模商業施設の制御,モニタリング,ステータスリーディングに特化したIoTエリアネットワーク無線である.

小電力の無線通信を利用しており,他の無線通信システムと干渉しにくい.

Z-Wave対応のコンセント,ドアの錠,温度制御パネル,電球などが発売されている.

(b)EnOcean

低消費電力化技術を適用した無線システムとしてビルオートメーション用途向けに開発したものである.

(c)Dust Networks

プロセスモニタ,状態監視などの工業応用向けに開発された.

p140 IoTエリアネットワークの有線種別

有線LANやPLCなどがある.


4-2 広域通信網(WAN)

p143 固定回線

光ブロードバンドやISDNなどがある.

p145 無線通信回線

(1)3G

第3世代移動通信システムを用いてパケット通信を行う方式である.携帯電話専用のネットワークなので,サービスエリアが広いことが特徴である.

(2)LTE(Long Term Evolution)

第3世代移動通信システムを発展させたものであり,3.9Gと位置付けられている.いわゆる4Gのこと.

(3)WiMAX

無線MAN用にIEEEで策定された802.16シリーズに基づいた方式である.

(4)LPWA

通信頻度が少ない,または通信量が少ない場合に適した方式である.

ライセンスバンドを用いるセルラー系LPWAでは,LTE Cat.M1(LTE-M),NB-IoTのような通信方式がある.

ライセンスバンドを用いない非セルラー系LPWAでは,SigFox,LoRaWAN,ELTRES ,ZETAのような通信方式がある.

(5)PHS(Personal Handyphone System)

コードレス電話を進化させ,屋外でも利用可能にしたシステムである.3GやLTEに比べて消費電力が少ない.

p151 5G

LTE/LTE-Advancedに次ぐ第5世代の移動通信システムを意味し,以下が5Gの特徴である.

・eMBB (Enhanced Mobile BroadBand) 超高速大容量通信

下り最大20Gbps、上り最大10Gbpsを目標とする.

・URLLC (Ultra-Reliable and Low Latency Communications) 超高信頼、低遅延通信

32バイト以上のパケットデータ送信時99.999%以上の信頼性確保、および伝送遅延1ミリ秒を目標とする.

・mMTC (Massive Machine Type Communications) 超大量デバイス接続

1km ^2あたり100万台のデバイス同時接続可能を目標とする.

5Gで用いられる技術は,ネットワークスライシング,MEC,NSAなどがある.

ローカル5G

企業や自治体が導入する自営の5Gネットワークであり,通信事業者が提供する5Gとは別に構築できるプライベートネットワークである.

メリットは,セキュリティ強化,広範囲の通信のカバー,他ネットワークの影響の低減などがある.

活用事例は,スマート工場,映像配信,遠隔機器操作などがある.


4-3 プロトコル

p158 IoTシステムで用いるプロトコル選定基準

・軽量性(プロトコル実装プログラム規模など)

・消費電力(電池駆動時間など)

・デバイスの移動

・リアルタイム性

・データ到達性

・通信携帯

トランザクションの開始

トランザクションの発生頻度

・データサイズ

・デバイス台数

p158 IoTシステムの主なプロトコル

(1)HTTP

HTML文書で書かれた文書などの情報をWebサーバとクライアントでやり取りするときに使われる.プラグラムシンプルになるが,通信セッションごとに大量のヘッダ情報が必要になるので,IoTの用途には向いていない場面もある.

(2)CoAP(Constrained Application Protocol)

CoAPはIETFでM2M通信向けに標準化されたWeb転送プロトコルである.HTTPとの互換性,ヘッダ量の削減,通信シーケンス処理の簡易化を主な特徴としている.

HTTPと比較して通信量を約60%削減できると期待されている.CoAPは,CPU能力が低く,メモリ容量が小さい端末,低消費電力ネットワーク,パケット損失率の高い無線ネットワークなどの制約された環境下での利用に適している.

(3)MQTT

MQTTはIBM社とEurotech社のメンバーにより1999年に考案されたシンプル,軽量,省電力のプロトコルである.

MQTTはPub/Subモデルを採用し,HTTPと比較して、ヘッダサイズを最大で一桁近く減らすことが可能である.

特に小さなサイズのデータを大量に送る際に,通信量の削減効果や端末のバッテリー消費抑制効果が期待できる.

(4) WebSocket

WebSocketはクライアントとサーバ間でセッションを維持し双方向のリアルタイム通信を実現するためのプロトコルである.

WebSocketでは最初にHTTPプロトコルを用いてハンドシェイクを行い,クライアントとサーバーの間でセッションを確立する.(クライアントとサーバー間のデータを暗号化する必要があるときはSSL/TLSを用いることができる.)

ハンドシェイクでセッションを確立した後はクライアントとサーバ間でデータフレーミングを用いてメッセージを送受信します.最後にクロージングハンドシェイクを行いセッションを閉じる.

WebSocketを利用することでクライアントとサーバ間でのセッション数とヘッダ情報量が低減できる.

(5)プロトコルバインディング

要件に応じたプロトコルの選択や新規プロトコルの対応を容易にするために,サービス層のプロトコルと下位層のプロトコルの差異を吸収する仕組みである.

(6)LwM2M(Lightweight M2M)

センサ機器などのIoTデバイス向けに策定されており,低スペックで低消費電力のIoTデバイスにも利用可能である.メッセージ伝送にはCoAPが利用される.


4-4 IoTの通信トラフィック

p174 ネットワーク使用帯域

データサイズ(byte)  \times 8  \div データ伝送時間(second)

p178 無線WAN網への負荷分散

無線WANで利用される無線リソースや通信事業者内のコアネットワーク設備は複数のユーザで共有しているため,不注意に大量のトラフィックが流れるとシステムの正常な運用が行えなくなる可能性がある.よって,以下の4点に留意する必要がある.

(1)接続分散

通信経路の確立を行う際には通信制御信号や認証情報のやり取りが発生するため,同じタイミングで大量のデバイスから通信確立を試みると輻輳が発生する可能性がある.

(2)デバイスからIoTサーバへのデータ送信

3GやLTEの通信経路確保が既に行われ,それが維持されている場合であっても,デバイス側からIoTサーバへのデータ送信分散は考慮する必要がある.

(3)IoTサーバからデバイスへのデータ送信

3GやLTEの通信経路確保が既に行われ,それが維持されている場合であっても,IoTサーバ側からデバイスへのデータ送信分散は考慮する必要がある.

(4)帯域使用率

映像データのような大容量データを連続的に送信する場合は,その地点で使用可能な無線リソースにおける占有率が高くなることに注意する.

p180 ネットワーク区間の遅延

無線WAN区間の通信経路は常に確立されているわけではない.通信経路の確立から始める場合はさらに接続遅延が起こる

LTEの場合は最低でも50〜200ms,3Gであればそれ以上のRTT(Round Trip Time)を見積もる必要がある.

処理全体における応答完了までの時間を短縮させたい場合は,IoTデバイスとサーバ間でやり取りされるパケット往復回数を最小化することが効果的である.


参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

難なく MCPC IoTシステム技術検定試験(中級) に合格したい

https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809

第3章 IoTデータ活用技術

3-1 IoT データ活用の概要

省略


3-2 IoT データ処理方式

p57 データ保存方式

IoTデータには,データ更新はほとんど発生せず,トランザクションも不要,という特徴がある.

ビッグデータは,Volume,Velocity,Varietyの3Vで表される点が従来のデータとは異なる.

RDBSQLを用いており,複雑なデータ検索や集計が可能であるが処理のオーバーヘッドが高い.一般的にはスケールアウトによる能力向上は難しく,スケールアップに頼る必要がある.

一方でNoSQLはデータ整合性の保証を緩めることで,スケールアウトが容易に行え,またデータ構造の変化に柔軟に対処しやすいという特徴がある.

よって,IoTデータの処理にはRDBMSよりNoSQLタイプの方が適している.

RDBMS

複数の表(table)形式でデータを管理し,表同士の関係(relation)を設定することで複雑なクエリに応えられる.

行指向型と列指向型がある.

NoSQL

アーキテクチャの違いにより様々な種類があり,以下が代表的である.

(1)キーバリュー型

キー値から値を取得する.

高速でスケールアウトしやすいので,キャッシュ用途やログデータの保存に向いている.

(2)ワイドカラム型

キー値に対して複数のカラムを持たせられる.

データごとに異なるカラムを持たせられるので,複数種類のセンサデータの格納などに向いている.列方向の集計も得意である.

(3)ドキュメント型

XMLJSONなどのドキュメントをそのまま格納できる.

スキーマが不要で,個々のドキュメントのデータ構造が自由なので,ニュースサイトやブログなどのWebアプリケーションに向いている.

(4)グラフ型

データ同士の関連性を管理する.

人と人の関係性を表したり,経路探索における最短経路の計算などに向いている.

p62 Hadoop

大規模データの蓄積・分析を分散処理技術により実現するオープンソースフレームワークである.

Hadoopを構成する要素は以下がある.

(1)HDFS(Hadoop Distributed File System)

分散ファイルシステムであり,データを上手く分散してノードに格納することで,データノードが全て故障しない限りデータは保証される.

(2)Hadoop MapReduce

分散コンピューティングフレームワークであり,Map処理とReduce処理に分かれる.

Map処理ではデータを分割し,分析に必要な部分を抽出する.

Reduce処理ではMap処理で得られたデータを計算する.

Map処理とReduce処理は並列実行可能であり,スケールアウトで性能向上を図れる.

(3)Apache Mahout

協調フィルタリングやクラスラリングなどを得意とするアルゴリズムである.

(4)HBase

大規模分散データベースである.

p64 ストリーミング処理

データが発生したタイミングでデータを逐次処理し,分析結果を表示する処理方式である.

ストリーミング処理が必要な場面は以下がある.

・大量かつ無限に発生するデータの処理

・一刻を争うセキュリティ対策

SNS,周辺情報,株価,為替などのリアルタイムを活かした価値創出

リアルタイムなデータの通信では,publishとsubscribeを導入し,通信相手先を意識することなくデータのやり取りを効率的に行えるPub/Subメッセージモデルが有効である.

p66 CEP(Complex Event Processing)

複数のデータ元から時系列に生み出されるデータをリアルタイムに処理,解析して出力する処理方式である.

適用例として,株価,SNSテキスト,センサデータなどのデータを扱うことが多い.

業務システムのような多数のイベント(生産ライン,営業,物流までの全体)を組み合わせて処理するシステムにCEPは向いている.


3-3 IoT データ分析方式

p67 データ分析処理手順

データ分析の処理手順は以下のようになる.

(1)現状把握/目標設定

現状把握と目標設定を事業的,技術的側面から考察する.

事前に全てを考慮するのは現実的ではないので,少量データによりアジャイル的に進めることが多い.

(2)データ収集

なるべく欠損やノイズのないデータを十分量収集し,適切なデータベースで保管する.

教師あり学習では教師データを用意する必要があり,コストがかかる.

(3)分析方法選択

詳しくは後述.

(4)データ前処理

詳しくは後述.

(5)データ分析

訓練用データと評価用データを分ける.訓練用データで分析モデルを学習し,評価用データで学習したモデルを評価する.

機械学習を行う場合は,分析モデルにハイパーパラメータが多数あるため,チューニングが必要である.

深層学習では,計算量が大きいため,学習用環境を用意する必要がある.

(6)結果の評価

詳しくは後述.

(7)導入と運用

評価の結果,目標が達成できたら導入運用をする.

導入後も定期的にデータ分析やチューニングが必要である.

p72 データ分析手法

データ分析手法は大きく分けて統計解析と機械学習がある.

統計解析は,既知のデータの特性を説明することが主な目的である.

機械学習は,既知のデータから未知のデータを予測することが主な目的である.

p73 統計解析

誤差や異常値,ノイズなどを伴ったデータから意味ある情報を引き出すために統計的な解析を行う.

統計解析は大きく分けて記述統計と推測統計がある.

記述統計はデータ全体がわかっているときに用い,それを平均値,中央値,比率,分散,標準偏差などに要約することでデータ全体のイメージを直感的に掴むことが可能である.

推測統計は一部分のデータからデータ全体の推定,検定,分類,相関などを分析する.

多変量解析とは,複数の変数からなる多変量データを数学的に扱い,これらのデータ間の関係を明確にする.関係を説明する変数を従属変数,従属変数を説明するために用いる変数を独立変数という.多変量解析は,予測,分類の目的のために使われる.

(1)予測

(a)相関分析

変数間の関連性を調べる分析であり,相関係数の有意性を出力する.

(b)回帰分析

影響を及ぼす独立変数と,影響を及ぼされる従属変数の間の関係を表す式を統計的手法で推定する.一次関数で表すことが多く,このときは最小二乗法を用いることが多い.

複数の独立変数で一つの従属変数を予測する重回帰分析や,被従属変数が数値ではないロジスティック回帰分析などもある.

(c)決定木分析

ある事項に対する観察結果から,その事項の目標値に対する結論を導ける.

数値で予測を表現する予測問題と,定性的や2値で予測判定を行う識別問題に分けられる.

応用例は,流通業界や外食産業の顧客分析やマーケティング最適化などである.

(2)分類

(a)主成分分析

データの中からいくつかの属性を選択し組み合わせ,新たな属性を作ることでデータ全体の分布傾向を把握する分析手法である.

(b)クラスター分析

データ全体を,データ間の類似度に従っていくつかのグループに分類する手法である.データ分類が階層的に行われるウォード法,特定のクラスター数に分類するk平均法がある.

p77 機械学習

訓練用データにより学習モデルを構築し,評価用データで分析結果を出力する.

(1)教師あり学習

独立変数と従属変数の組を大量に学習させ,予測モデルや識別モデルなどを構築する.訓練用データと正解情報をもとに学習モデルを構築し,未知のデータを与えることで分析結果を出力する.

ベイジアンモデル,サポートベクターマシン,ランダムフォレストなどがある.

(2)教師なし学習

独立変数のみを大量に学習させ,特徴を自ら学習して学習モデルを構築する.

手法の例としては,クラスタリングや異常検知がある.

p81 強化学習

行動に対する報酬を最大にするためにはどのような行動をとるべきかを相互作用により学習する問題のフレームワークである.

p82 深層学習

人間の脳の神経回路を元にして,それを模倣する形でモデル化したニューラルネットワークを積層して多層構造にしたモデルで学習を行う.

深層学習以前の機械学習では,どの独立変数を用いれば精度の高いモデルが得られるかという特徴抽出にコストがかかっていたが,深層学習ではコンピュータが行うことができる.

学習目的に応じて,以下のような学習モデルがある.

(1)CNN

データが2次元構造や3次元構造を持っているときに有効である.

音声認識自然言語処理などに用いられる.

(2)RNN

時系列のあるデータを扱うことができる.

音声合成音声認識機械翻訳などの自然言語処理などに用いられる.

(3)オートエンコーダ

ノイズ除去,次元圧縮などに用いられる.

(4)強化深層学習

行動価値関数を深層ニューラルネットワークで表現することで,処理時間やメモリ量を低減している.

p69 データ前処理

(1)データクレンジング

(a)異常データ処理

異常値や外れ値を削除したり,平均値や前後の値に置き換えたり,フィルタリング処理をしたりする.

(b)欠損データ処理

機器の不具合や通信不良などにより欠損したデータは,再度取得を行ったり,補完をしたりする.欠損データを除いて分析を進めることもある.

(2)データ加工・整形

(a)リサンプリング

データ計測頻度が多いとデータポイント数が必要以上に多くなりえるため,複数のデータポイントを集約するダウンサンプリングを行う.

データ計測頻度が不規則であるなど,計測タイミングが異なり必要なデータポイントが存在しない時には,補完処理などでデータの時系列を揃えるリサンプリングを行う.

(b)データ変換,統合

データを分析しやすい形に変換する.以下のような例がある.

自然言語データを数値ベクトルにする.

・指数的に変化するデータを対数変換する.

・周期性があるデータはフーリエ変換する.

・画像データはエッジ抽出や領域分割する.

最後に,得られた様々なデータを統合して1つの多次元でーたとする.

(c)正規化,標準化

単位が異なるデータを比較するために行う.

正規化(normalization)

元データを一定範囲に入れるような操作をする.元データを構成する数値が一定範囲に入っている場合や,データ分布が一様分布に近いときなどに使われる.

標準化(standardization)

データ分布の平均値が0,分散が1になるように変換する.分布が正規分布に近いときなどに使われる.

(3)データ水増し

データが十分に収集できず必要な量に満たないとき,収集済みデータを用いてデータ量を用いて水増し(data augmentation)を行う.

(a)変形

収集済みデータを変形,加工することで水増しする.

(b)データ混合

収集済みデータのいくつかを混合,合成して新しいデータを作成する.

代表的手法にMixupがある.

(c)シミュレーション,生成

3D,CGなどで実環境をシミュレーションすることで学習データを生成する.実データの収集にコストがかかったり,めったに起きない状況や危険な状況のデータを利用したいときなどに使われる.

p87 分析結果の評価

教師あり学習では,特定の訓練データに対して学習をしすぎると,学習モデルが訓練データに過剰に適合することで未知の入力データに対して誤差が悪化することがあり,過学習という.そこで,得られたデータを訓練用と評価用に分け,訓練用データでモデルを学習し,評価用データでモデルの精度を評価する交差検証を行う.

訓練用データによる誤差を訓練誤差,未知のデータに対する誤差を汎化誤差という.

交差検証には,ホールドアウト法,k分割法などがある.

p89 機械学習の説明可能性

深層学習などの機械学習は予測精度が高いことが多いという長所がある一方で,ブラックボックになりやすいという短所がある.

機械学習の説明可能性に着目した手法は以下がある.

(1)説明性の高さ

判別モデルのどの特徴量が重要かを読み取る手法は以下がある.

・線形回帰

・決定木やその派生手法(ランダムフォレストなど)

ベイジアンモデル

これらは説明性が高い代わりに,複雑な問題には必ずしも精度が高いとは言えない.

(2)入力のどの部分に着目したか

学習モデルの出力結果から演算を逆に辿って入力データのどの部分が出力に影響するかを示す手法である.

入力のどの部分に着目したかの手法にはGrad-CAMがある.


3-4 IoT データ活用技術

p101 IoTプラットフォーム

IoTプラットフォームは一般的にはサーバまたはクラウドを指すが,ゲートウェイ以降のクラウド側の部分と後段の可視化分析も含めて広義のIoTプラットフォームということもある.


3-5 IoT ロボットとIoT

省略


参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

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https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809

第2章 IoTシステムのコンピューティング技術

2-1 クラウド/エッジコンピューティング

p20 IoTシステム構成

フィールド領域:IoTデバイス,IoTゲートウェイ

インフラストラクチャ領域:IoTサーバ,クラウドなど


フィールド領域とインフラストラクチャ領域はWANで連携される.

IoTデバイスやIoTゲートウェイ間の通信には,無線PAN近距離無線(無線LANZigBeeBluetoothなど),有線LAN,PLCなどが使われる.

WANには,3G,LTEWiMAXなどの移動体通信ネットワークや,固定系ネットワークが使われる.

p21 IoTゲートウェイの機能

中継処理

・データの集約

・送信タイミングの調整

・フィルタリング処理(ノイズ除去など)

・エッジコンピューティングによるデータ処理

負荷分散

処理内容によって,処理をクラウド側,エッジ側に分散させる.

リアルタイム処理

自動走行車の制御などのリアルタイム処理

p22 クラウド/エッジコンピューティング

クラウドコンピューティング

クラウドネットワーク上のコンピュータリソースを必要に応じて利用し,生産性向上,コスト削減,データ管理の効率化を図る.

エッジコンピューティング

伝送遅延を抑えるため,ネットワーク上のユーザの近いところで処理を行う.

2-2 IoTゲートウェイ

p24 接続形態

直接接続

IoTデバイスをIoTサーバに直接接続する時,IoTデバイスは複数のIoTサーバと通信をするのがスペック的に難しいときもある.さらに,IoTサーバはつながったIoTデバイスを全て管理する必要があるので大変.

IoTゲートウェイ経由接続

直接接続の課題を解決する.

IoTデバイスが収集したデータを集約することで,通信上の負荷を軽減できる.

通信を終端することで,不正アクセス防止にもつながる.

IoTエリアネットワーク内の通信プロトコルとWANの通信プロトコルの変換を行う.

p26 OSGi

OSGiはAllianceによって標準化されたJavaベースのソフトウェアコンポーネントらしいがよくわからんのでパス.

p27 プロトコル変換

IoTネットワークとWANでは使う通信プロトコルが異なるため,変換が必要である.

IoTエリアネットワークの通信では低コスト,低消費電力を求めるため,6LoWPAN,CoAPを使うと嬉しい.TCP/IPとの互換性も高いのでさらに嬉しい.

WANではTCP/IPを使うことが多い.

2-3 クラウドコンピューティング

p29 クラウドサービスの形態

IaaS

コンピュータシステムの環境を提供.

PaaS

IaaSをベースに,データ収集,分散処理,保存などのサービスを提供.

自分で用意できなさそうな部分をサービスとして利用する.

SaaS

データ処理はPaaSに任せて,データ利用のためのアプリケーションは自分で作成したり,提供されるソフトウェアを使う.

BaaS

IoTアプリケーションのバックエンドに必要なサービス(データ保管,プッシュ通信,ユーザ管理,SNS連携など)を提供し,IoTアプリケーションからAPIで呼び出す.

p30 パブリック/プライベートクラウド

パブリッククラウド

プロバイダが提供するクラウドコンピューティング環境であり,不特定多数のユーザがインターネットを通じてサービスを利用する.

プライベートクラウド

ある企業にだけパブリッククラウドを切り出し,高度なセキュリティポリシーを適用するなどの自由度の高いシステム構築に向いた形態.

中でも,企業が独自にサーバを所有し,企業内に構築するプライベートクラウドをオンプレミスという.

2-4 エッジコンピューティング

クラウドコンピューティングは伝送遅延がネックとなるため,エッジコンピューティングの考え方が考案された.

エッジコンピューティングは伝送遅延を抑えるため,ネットワーク上のユーザの近いところで処理を行う.


メリット

近くのサーバなどに処理の一部を肩代わりさせることで,その分高度なアプリケーションを動作させるリソースが生まれる.

クラウドへのデータ伝送を省略することで,ネットワークトラフィックを削減可能.

p33 エッジコンピューティングの活用

oneM2MのVehicle Data Collection Service(エッジコンピューティングを車両に導入)

Edgecrossコンソーシアムは2017年に設立が発表された団体で,ITシステムとFA(Factory Automation)の連携を図ることを目的とする.

ファナック株式会社は,2017年にFIELD systemと呼ばれるIoTとFAの連携をうたうプラットフォームをリリースした.

p36 エッジAI

大規模データ処理などの大量のコンピュータパワーを必要とする環境はクラウド上でしか構築できなかったが,自動走行車などの分野ではリアルタイムなAI分析が必要であり,エッジ側でAIを実行する考え方が生まれた.

要件として,インターネットに接続できない環境や,サーバ接続ができない環境下でのエッジ側のみでの稼働がある.


上記の実現のためには,以下があげられる.

(1)AI分析モデルを実行可能なハードウェア拡張

GPUを組み込む,分析処理に特化したアクセラレータを組み込む,エッジAI向けSoCを組み込む,などがある.

(2)学習済みモデルのエッジ側への組み込み

クラウドで作成した学習モデルをエッジで使用する.

(3)FPGA(Field Programmable Gate Array)の活用

単純な処理の繰り返しをFGPAに専用の論理回路(VHDLVerilogなどで記述)に組み込む.

論理回路設計を間違えても現場で修正可能なのが特徴であり,開発コストを抑えたり,開発リスクを低減できるメリットもある.

2-5 データ駆動型システム

p39 CPS(Cyber Physical System)

現実世界のセンサデバイスなどが生み出すデータを,仮想世界で処理することで価値を創出する考え方.

Physical空間のセンサなどで集めたデータをゲートウェイなどを経由してCyber空間のサーバで処理をし,Physical空間にフィードバックする.このような動きは,「データ駆動」に基づくシステムの機能といえる.

p41 Industrie4.0

ドイツ政府が推進しており,ドイツ製造業の高度化を目指す戦略的プロジェクトである.ICT,IoT技術を駆使した製造業の革新を目指している.

基本はCPSをベースとして製造業を強化することで,工場の稼働状況をリアルタイムに把握し,他の工場との連携などを含めたバリューチェーン全体にわたって効率化を図る.

p41 デジタルツイン

Physical空間が生成するデータをもとに,Cyber空間上に仮想的な製品製造を行うシミュレーション環境を構築する.デジタルツインのシミュレーションにより,Physical空間の各種データはどのような動きをするのか,どのような影響を周辺機器に与えているかなどを予測できる.

p42 IoTサービスプラットフォーム

IoTサービスは,サービス分野ごとに特殊な固有サービス機能(IoTアプリケーション)と,サービス分野に依存しない共通機能に分けられる.

IoTアプリケーション

(1)フィールド領域

センサ,アクチュエータを含むIoTデバイスや,複数のIoTデバイスを集約するIoTゲートウェイが含まれる.

(2)インフラストラクチャ領域

IoTデバイスからのデータの集約,分析,あるいはIoTデバイスを制御するサーバやクラウド部分を指す.

(3)下位層ネットワーク

フィールド領域とインフラストラクチャ領域を連携させる.


p43 垂直統合型と水平連携型

(1)垂直統合

分野ごとに単一のIoTアプリケーションとそれにかかわるIoTゲートウェイ,IoTデバイスが接続され,エンドツーエンドでのサービス提供が行われる.IoTシステムにおいて共通する機能を毎回実装する必要があり,コストがかかるという欠点がある.

(2)水平連携型

IoTシステムにおける共通機能はプラットフォームとして提供し,IoTアプリケーションはこのプラットフォーム上で個別に構築する.共通機能の構築コストを抑えられるだけでなく,異なるIoTアプリケーションが収集したデータを共有できるメリットもある.

共通機能

(1)データ収集

IoTデバイスやIoTゲートウェイからデータを収集する.

(2)データ蓄積

収集したデータを蓄積する.

(3)データ可視化・分析

収集,蓄積したデータを可視化したり,データの相関分析や特異点検出を行う.

(4)遠隔制御

IoTデバイスからの指示やデータ分析の結果に基づいて,IoTデバイスに接続されたアクチュエータを駆動させるための制御コマンドを送信する.

(5)イベント通知

IoTデバイスが検知した状態変化や取得したIoTデータをIoTアプリケーションに通知する.

(6)デバイス管理

IoTデバイスの位置や接続方法,状態を管理したり,IoTデバイスファームウェアをアップデートする.

(7)アプリケーションインターフェース

様々なIoTアプリケーションからIoTサービスを利用できるように,インターフェースを提供する.

p45 データ収集の方法

(1) アップロード方式

IoTデバイスまたはIoTゲートウェイが主導となり,IoTサービスにデータをアップロードする.アップロード方式はさらに以下の3つに分類される.

(a)逐次収集方式

IoTデバイスでデータが発生した都度,または定期的にIoTサービスにデータをアップロードする.

リアルタイムにデータを収集することが可能である反面,データサイズに比べて通信ヘッダが大きくなり,ネットワーク負荷が増大する.また,計測したデータを全てサーバに蓄積するため,ストレージコストもかかる.

(b)一時蓄積方式

IoTゲートウェイにデータを一時的に蓄積しておき,一定時間ごとにまとめてIoTサービスにアップロードする.

ネットワーク負荷を軽減できるが,リアルタイムなデータ収集には向いていない.また,ストレージコストはかかる.

(c)区間集約方式

IoTゲートウェイで蓄積したデータの集約のみをIoTサーバにアップロードする.

ネットワーク負荷とストレージコストの両方を解決するが,リアルタイムなデータ収集には向いていない.

(2) ポーリング方式

IoTプラットフォームが主導となり,IoTデバイス/ゲートウェイからデータを取得する.

IoTアプリケーションが必要とするタイミングでデータを収集できる.また,IoTデバイスが非常に多くても,IoTアプリケーションが順番にデータ収集をするので,ネットワーク負荷やサーバ負荷をおさえられる.

しかし,リアルタイムなデータ収集には向いていない.

(3) パブリッシュ・サブスクライブ方式

あらかじめIoTアプリケーションが必要なデータのトピックをsubscribeすることをIoTゲートウェイに伝えておく.IoTゲートウェイは,IoTデバイスからpublishされたデータを,そのデータをsubscribeしているIoTアプリケーションに送信する.

p47 遠隔制御

(1)直接制御方式

IoTサービスプラットフォームが必要とするタイミングで遠隔制御要求をIoTゲートウェイに送信し,応答を受け取る.

IoTデバイスを即座に制御できるが,不正操作防止のアクセス制御などが必要.

(2)ポーリング方式

IoTゲートウェイは定期的にIoTプラットフォームに遠隔制御要求の有無を照会する.要求があれば,それを取得し応答する.要求がなければ,一定時間後(ポーリング間隔)に再度照会する.

安全性は高いが,要求の応答性はポーリング間隔に依存する.

(3)ロングポーリング方式

IoTゲートウェイはIoTプラットフォームに遠隔制御要求の有無を照会する.要求がなければ,IoTプラットフォームで要求があるまで待機する.

安全性と即時性をともに満たすが,IoTゲートウェイが多く接続されるシステムではサーバ負荷が問題となることもある.

(4)双方向通信方式

双方向のプロトコルを使用することで,IoTサービスプラットフォームとIoTゲートウェイのどちらからでも要求を出せる.

XMMPで遠隔制御を実現することも可能である.

(5)ウェイクアップ方式

通常はスリープ状態にしておき,信号のやり取りで機器を起動させる方式.遠隔制御の際にはSMSなどで信号をやり取りする.

ネットワーク負荷の軽減につながる.


参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

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https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809

第1章 IoT概要

p4 IoTを取り巻く世界の動き

Industrie4.0(ドイツ)

第4次産業革命


IIC(Industry Internet Consortium)

Industry Internetの普及が目的である.


AllSeen Alliance

各社デバイスやサービスの相互運用のためのフレームワークを開発 .

p4 標準化動向

oneM2M

共通サービスプラットフォームの普及を図る.プロダクトの相互接続性や規格適合性を定めた技術書を出している.


3GPP

NB-IoT(Narrow Band IoT)の標準化を進めていて,LPWA(Low Power Wide Area)の構築を進めている.


ITU-T

スマートシティ・スマートコミュニティなどが議題らしい.

p4 オープンイノベーション

企業間の技術やアイデアを組み合わせたり,自社の特許などを公開し,新たな価値を創出する考え方.

ArduinoRaspberry Piなどの普及により,イカームーブメント(無数の個人がコミュニティなどで協力し合い,モノの製造などに取り組むこと)が進んでいる.

p7 IoTシステム構成

IoTサーバ

収集したデータを加工,分析し,実世界に活かす.


IoTゲートウェイ

・受信したデータを集約してIoTサーバへ送信する

・フィルタリング

・通信トラフィック削減のため,前処理など

・エッジコンピューティング


IoTデバイス

データを収集する.センサが重要.

p12 アジャイル開発

システム開発におけるプロジェクト管理方法の一つで,スクラムやXPなどの流派がある.

イテレーションという短期間(1~2週間が多い)での開発を繰り返すことで,開発リスクを低減している.

p16 DX

Digital Transformationのことで,定義は場合によって異なる.

ストルターマン教授によると,「ITの浸透が,人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」こと.

企業がDXに取り組む目的は,急激な市場の変化から取り残されないこと,人口減少による人材不足への対応,など.

参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

難なく MCPC IoTシステム技術検定試験(中級) に合格したい

https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809