情報系のべんきょう

情報系のノートを作ります.ビギナー向けでは無いです.

第4章 IoT通信方式

4-1 IoTエリアネットワーク無線

p118 電波特性

電波は周波数によって直進性,距離による伝搬損失,透過損失,情報伝送容量,アンテナの大きさなどが変わる.

直進性は,周波数が高いほど強くなる.

伝搬損失は,何もない空間では距離の2乗に比例して大きくなる.

透過損失は,周波数が高いほど大きくなる.

情報伝送容量は,周波数が高いほど大きくなる.

アンテナの大きさは,周波数が高いほど小さくなるので,IoTデバイスの小型化に寄与する.

p121 免許不要の無線局

電波を使う通信システムは,無線局として総務大臣の免許あるいは登録が必要だが,以下の無線局は一定の技術基準に適合している旨の表示がある場合は免許不要で利用可能である.

(1)微弱無線局

発射する電波が著しく微弱な無線局(主に322MHz以下).

(2)特定小電力無線局

総務省が指定する周波数,方式,特定の用途目的の無線局で,技術基準適合証明を取得して技適マークが表示された無線局.

(3)小電力データ通信システム

総務省が指定する周波数を使用し,送信電力が0.01W以下で,主にデータ転送のために無線通信を行うもので,技術基準適合証明を受けている無線局.

(4)簡易無線局

無線従事者による操作を必要としない簡易な無線業務を行う無線局で,技術基準適合証明を受けている無線局.920 MHz帯では登録が必要で,登録の有効期間は5年である.

p123 IoTエリアネットワークのネットワークトポロジ

(1)ポイントツーポイント型

Bluetoothなどの1対1通信で利用される.

(2)スター型

無線LANなどで利用され,混信を考慮する必要がある.

(3)ツリー型

より多くのIoTデバイスを接続できる.混信を考慮する必要がある.

(4)メッシュ型

信頼性の高いネットワークを構築できる.混信を考慮する必要がある.電力供給に制限のある小電力システムには不向きである.

p125 IoTエリアネットワークの無線種別

(1)Bluetooth

近距離無線通信規格の1つで,BLE(Bluetooth Low Energy)の規格化により,ビーコンなどの新しい分野に活用されている.

BLEは通信可能距離は短く通信速度は低速だが,ボタン電池1つで数年連続で動作させることができる低消費電力で動作する無線通信技術である.

BLEで採用されたプロファイルであるPXP(Proximity)を用いることにより,ペアリングしたデバイスとの距離を判別可能であり,これにより盗難防止などを実現できる.

Bluetoothはブロードキャスト通信が可能であり,1つの機器からの情報を一方向で不特定多数の機器に発信することが可能である.

BLEの活用事例は,盗難防止,忘れ物防止,位置検知,情報配信などがある.

(2)IEEE802.15.4

センサネットワークでは,少ないデータを低電力で伝送する無線ネットワークが求められるが,これはPANと呼ばれる.この接続規格はIEEEにより作成され,IEEE802.15シリーズとして標準化されている.

(a)ZigBee

センサネットワークを主目的とする近距離無線通信規格の1つで,PHY層とMAC層にIEEE802.15.4を採用している.無線通信距離が短く,伝送速度も低速であるが,無線機器やシステムを安価に構成でき,消費電力が少ない.

複数の無線端末がバケツリレー式にデータを中継するマルチホップ通信を採用しており,遠くまでデータを運ぶことが可能である.マルチホップを実現するネットワーク方式は,メッシュネットワークとツリーネットワークがある.メッシュネットワークは1つの伝送ルートが遮断されても別の伝送ルートを使用できる.ツリーネットワークはメッシュネットワークに比べてコストが安価である.

活用事例は,スマートエナジー,リモートコントロール,ホームオートメーション,ヘルスケア,ビルディングオートメーション,PCの入力デバイスなどがある.

(b)Wi-SUN

本体は自動メータ検針のために策定された規格である.

東京電力のスマートメータに採用されており,今後はインフラ施設や設備の監視や制御,農業用センサのデータ収集,防災用モニタリングシステムなどの分野で利用が期待される.

(3)無線LAN

無線LANの技術標準はIEEEにより作成され,IEEE802.11シリーズとして標準化されている.市場では世界中で使用可能な2.4GHz帯を使用するIEEE802.11bが先行して普及している.

802.11bでは最大伝送速度は11Mbpsだが,2.4GHz帯を使用しているので約100mの到達距離が確保可能である.しかし,電子レンジやほかの無線システムなどの様々な機器が利用可能なISMバンドを使用しているため,電波干渉を受ける可能性が大きくなる.

802.11aでは5GHz帯では電波干渉は起こりにくいが,周波数が2.4GHzに比べて高いため,通信距離は短い.

隠れ端末問題

無線LANでは複数のIoTデバイスが効率よくAPと通信することができるような仕組みとしてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)という技術を採用している。

CSMA/CAは,データを送信しようとするIoTデバイスが送信前に使用するチャネルが他の通信で使用されているか否かを受信(Carrier Sense)し,電波がない場合のみ送信を行うことで複数のIoTデバイスが一つのAPとのアクセス(Multiple Access)を可能となるように衝突(Collision Avoidance)を回避する方法である.

広い領域を一つのAPでカバーすればIoTデバイス間の距離が長くなる場合があり,他のIoTデバイスが送信した電波を距離の離れた他のIoTデバイスで受信することができずCSMA/CAがうまく機能しないことがあり,APで電波衝突が起こるためスループットが低下する.これを隠れ端末問題という.

隠れ端末問題は,送信制御のメカニズムのRTS/CTS信号を利用することで回避することができる.この方法は,送信しようとするIoTデバイスRTS(Request To Send)という短い信号をAPに送信し,APは通信可能である場合にはCTS(Clear To Send)をその IoT デバイスに送り、送信優先権を与えることで電波の衝突を回避するものである。

晒し端末問題

隣接するAPに所属する端末間が近い場合,CSMA/CAによって他のAPに所属する端末の信号を検出してしまい,送信したくてもできない状態が発生することがあり,スループットの低下が起こる。これを晒し端末問題という.

晒し端末問題は,隣接するAP間で適切なチャネルを設定することで回避可能である.

無線LANセキュリティ

下記のような対策がある.

・通信データの暗号化

SSIDのステルス性

MACアドレスフィルタリング

・ネットワーク分離

(4)近距離無線

(a)RFID(Radio Frequency IDentifier),NFC(Near FIeld Communication)

RFIDとは,ID情報を埋め込んだ無線タグから,電波を用いて近距離の無線通信を行うものである.

接触ICカードNFCと呼ばれ,広義のRFIDでもある.

RFIDの活用事例としては,工場での工程管理,航空機整備などでの工具紛失対策,市民マラソンでのタイム計測などがある.

RFIDの特徴は以下である.

・書き込み修正が可能である.

・読み取り範囲が広く,読み取り方向の自由度が高い.

・見えない場所や,ほこりなどで汚れている場合でも読み取り可能である.

・一度に複数のRFIDを読み取り可能である.

(b)トランスファージェット

データを転送したい送信側の機器を受信側の機器の数センチ以内に近づけることで高速なデータ転送が可能である.

電波状況により自動的に転送レートを落として安定した通信を行える.また,送信電力が非常に弱く,他の無線システムに干渉を与えることはほぼない.一方で,本来通信するべきではない相手にもデータを送信する可能性もあるため,通信相手機器のMACアドレスを事前登録することで対策する機能がある.

活用事例としては,公共の場所に設置したデジタルKIOSKにより,映画の予告などの大容量コンテンツや,テーマパークの電子マップをダウンロードしたりできる.非接触式であるため,劣悪な環境での利用も提案されている.

(5)その他

(a)Z-Wave

家庭及び小規模商業施設の制御,モニタリング,ステータスリーディングに特化したIoTエリアネットワーク無線である.

小電力の無線通信を利用しており,他の無線通信システムと干渉しにくい.

Z-Wave対応のコンセント,ドアの錠,温度制御パネル,電球などが発売されている.

(b)EnOcean

低消費電力化技術を適用した無線システムとしてビルオートメーション用途向けに開発したものである.

(c)Dust Networks

プロセスモニタ,状態監視などの工業応用向けに開発された.

p140 IoTエリアネットワークの有線種別

有線LANやPLCなどがある.


4-2 広域通信網(WAN)

p143 固定回線

光ブロードバンドやISDNなどがある.

p145 無線通信回線

(1)3G

第3世代移動通信システムを用いてパケット通信を行う方式である.携帯電話専用のネットワークなので,サービスエリアが広いことが特徴である.

(2)LTE(Long Term Evolution)

第3世代移動通信システムを発展させたものであり,3.9Gと位置付けられている.いわゆる4Gのこと.

(3)WiMAX

無線MAN用にIEEEで策定された802.16シリーズに基づいた方式である.

(4)LPWA

通信頻度が少ない,または通信量が少ない場合に適した方式である.

ライセンスバンドを用いるセルラー系LPWAでは,LTE Cat.M1(LTE-M),NB-IoTのような通信方式がある.

ライセンスバンドを用いない非セルラー系LPWAでは,SigFox,LoRaWAN,ELTRES ,ZETAのような通信方式がある.

(5)PHS(Personal Handyphone System)

コードレス電話を進化させ,屋外でも利用可能にしたシステムである.3GやLTEに比べて消費電力が少ない.

p151 5G

LTE/LTE-Advancedに次ぐ第5世代の移動通信システムを意味し,以下が5Gの特徴である.

・eMBB (Enhanced Mobile BroadBand) 超高速大容量通信

下り最大20Gbps、上り最大10Gbpsを目標とする.

・URLLC (Ultra-Reliable and Low Latency Communications) 超高信頼、低遅延通信

32バイト以上のパケットデータ送信時99.999%以上の信頼性確保、および伝送遅延1ミリ秒を目標とする.

・mMTC (Massive Machine Type Communications) 超大量デバイス接続

1km ^2あたり100万台のデバイス同時接続可能を目標とする.

5Gで用いられる技術は,ネットワークスライシング,MEC,NSAなどがある.

ローカル5G

企業や自治体が導入する自営の5Gネットワークであり,通信事業者が提供する5Gとは別に構築できるプライベートネットワークである.

メリットは,セキュリティ強化,広範囲の通信のカバー,他ネットワークの影響の低減などがある.

活用事例は,スマート工場,映像配信,遠隔機器操作などがある.


4-3 プロトコル

p158 IoTシステムで用いるプロトコル選定基準

・軽量性(プロトコル実装プログラム規模など)

・消費電力(電池駆動時間など)

・デバイスの移動

・リアルタイム性

・データ到達性

・通信携帯

トランザクションの開始

トランザクションの発生頻度

・データサイズ

・デバイス台数

p158 IoTシステムの主なプロトコル

(1)HTTP

HTML文書で書かれた文書などの情報をWebサーバとクライアントでやり取りするときに使われる.プラグラムシンプルになるが,通信セッションごとに大量のヘッダ情報が必要になるので,IoTの用途には向いていない場面もある.

(2)CoAP(Constrained Application Protocol)

CoAPはIETFでM2M通信向けに標準化されたWeb転送プロトコルである.HTTPとの互換性,ヘッダ量の削減,通信シーケンス処理の簡易化を主な特徴としている.

HTTPと比較して通信量を約60%削減できると期待されている.CoAPは,CPU能力が低く,メモリ容量が小さい端末,低消費電力ネットワーク,パケット損失率の高い無線ネットワークなどの制約された環境下での利用に適している.

(3)MQTT

MQTTはIBM社とEurotech社のメンバーにより1999年に考案されたシンプル,軽量,省電力のプロトコルである.

MQTTはPub/Subモデルを採用し,HTTPと比較して、ヘッダサイズを最大で一桁近く減らすことが可能である.

特に小さなサイズのデータを大量に送る際に,通信量の削減効果や端末のバッテリー消費抑制効果が期待できる.

(4) WebSocket

WebSocketはクライアントとサーバ間でセッションを維持し双方向のリアルタイム通信を実現するためのプロトコルである.

WebSocketでは最初にHTTPプロトコルを用いてハンドシェイクを行い,クライアントとサーバーの間でセッションを確立する.(クライアントとサーバー間のデータを暗号化する必要があるときはSSL/TLSを用いることができる.)

ハンドシェイクでセッションを確立した後はクライアントとサーバ間でデータフレーミングを用いてメッセージを送受信します.最後にクロージングハンドシェイクを行いセッションを閉じる.

WebSocketを利用することでクライアントとサーバ間でのセッション数とヘッダ情報量が低減できる.

(5)プロトコルバインディング

要件に応じたプロトコルの選択や新規プロトコルの対応を容易にするために,サービス層のプロトコルと下位層のプロトコルの差異を吸収する仕組みである.

(6)LwM2M(Lightweight M2M)

センサ機器などのIoTデバイス向けに策定されており,低スペックで低消費電力のIoTデバイスにも利用可能である.メッセージ伝送にはCoAPが利用される.


4-4 IoTの通信トラフィック

p174 ネットワーク使用帯域

データサイズ(byte)  \times 8  \div データ伝送時間(second)

p178 無線WAN網への負荷分散

無線WANで利用される無線リソースや通信事業者内のコアネットワーク設備は複数のユーザで共有しているため,不注意に大量のトラフィックが流れるとシステムの正常な運用が行えなくなる可能性がある.よって,以下の4点に留意する必要がある.

(1)接続分散

通信経路の確立を行う際には通信制御信号や認証情報のやり取りが発生するため,同じタイミングで大量のデバイスから通信確立を試みると輻輳が発生する可能性がある.

(2)デバイスからIoTサーバへのデータ送信

3GやLTEの通信経路確保が既に行われ,それが維持されている場合であっても,デバイス側からIoTサーバへのデータ送信分散は考慮する必要がある.

(3)IoTサーバからデバイスへのデータ送信

3GやLTEの通信経路確保が既に行われ,それが維持されている場合であっても,IoTサーバ側からデバイスへのデータ送信分散は考慮する必要がある.

(4)帯域使用率

映像データのような大容量データを連続的に送信する場合は,その地点で使用可能な無線リソースにおける占有率が高くなることに注意する.

p180 ネットワーク区間の遅延

無線WAN区間の通信経路は常に確立されているわけではない.通信経路の確立から始める場合はさらに接続遅延が起こる

LTEの場合は最低でも50〜200ms,3Gであればそれ以上のRTT(Round Trip Time)を見積もる必要がある.

処理全体における応答完了までの時間を短縮させたい場合は,IoTデバイスとサーバ間でやり取りされるパケット往復回数を最小化することが効果的である.


参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

難なく MCPC IoTシステム技術検定試験(中級) に合格したい

https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809