情報系のべんきょう

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第8章 IoTシステムに関する保守・運用上の注意点

8-1 保守と運用

p316 IoTシステムにおける保守と運用

保守,運用の分類は様々だが,一例を以下に示す.

(1)IoTシステムの保守

・IoTデバイスゲートウェイの組み込みソフトウェアの保守

・IoTデバイスゲートウェイの障害の検出,回復,交換

・IoTデバイスゲートウェイのバッテリー交換,点検,清掃

・データの品質確認,異常不整合の検出,修正

・保守用機器,保守部品の管理

(2)IoTシステムの運用

・システムの起動停止,性能,稼働状況の監視

・デバイスの設置場所の管理

・ソフトウェアのバージョン管理

・ログトラフィックデータの収集管理

・バックアップデータの管理

・システムの設定変更,修正プログラムの適用

・ヘルプデスク,コールセンター等運用サポート

・ユーザ管理

p317 IoT保守と運用のリスク

IoTデバイスは工場や商店,家庭内あるいは装置の中など様々な環境で使用される.そのためデバイスゲートウェイが予期せぬ動作をする可能性があり,早急に対処しなければならない場合も出てくる.例えばセンサからの出力が来ない,あるいは異常値が出力される,ゲートウェイからインターネットに接続できないなど,予想外の事態が発生する可能性があり,これらをあらかじめ想定し対応手段を考えておくことが求められる.

(1)電源供給断

電源供給断には,電力会社からの電力供給の停止と電池切れの場合が考えられる.IoTデバイスではAC電源に接続される場合は電池交換の必要はないが,単体で設置される場合は一次電池(乾電池のような化学電池)または二次電池(充電式電池)の確保,エナジーハーベスティングなどの手段が必要になる.一次電池は定期的に交換する必要がある.二次電池では例えば太陽光発電を利用して蓄電することが考えられるが,この場合は太陽光パネルに光が当たるように保たなければならない.このためにデバイスの設置場所にも注意が必要である.AC電源を利用するときは停電が発生すると回復時にタイマーなどをリセットする必要が生じる場合がある.

(2)行方不明

バイスが行方不明になることもリスクの1つである.他のデバイスではGPS機能によってデバイスの居所がわかる場合があるが,安価なデバイスではGPS機能を搭載できないためデバイスの居所を突き止める事は困難である.デバイスが手の届くところに設置されているときは人が持ち去る可能性もリスクとなる.ウェアラブルバイスの場合は紛失にも注意が必要である.このほか天災の被害による紛失がある.

(3)故障

バイスそのものの故障にも対策が必要である.その場合,持ち帰って修理するのか,故障したデバイスを処分して交換するのかを決めておく必要がある.デバイスの価格と修理費用の兼ね合いで基準を定めておくことが迅速な対応に効果的である.

(4)外乱

外乱によるセンサの感度低下の例として,センサ部分への塵埃の付着や,光学センサの受光部への虫の付着などがある.また,磁気を用いたセンサであればスピーカーなど強力な磁界が外乱となる.IoTエリアネットワークに関してはデバイスからゲートウェイまでの通信で,規格通りに動作しないという問題が発生する.特に,同じ周波数帯域で多くの電波が使われている場合,干渉が発生して電波の到達距離が短くなることが起こりえる.

(5)保守不良

保守作業の不良にも注意を払う必要がある.保守対象となるデバイスが多数ある場合にはセンサ部分の清掃不良,清掃漏れなどが起こりがちである.センサの移動や追加設置の際,センサの感度設定が必要な場合があり,これを誤ると誤検出に繋がる.センサの閾値設定も難しい課題である.

p319 IoT保守員・運用管理者が持つべきスキル

バイスには清掃やアクチュエータの他,ゲートウェイとの通信機能,組み込みソフトウェア,さらに電源が搭載されている.デバイスからゲートウェイまでの修理,復旧の作業にはセンサやアクチュエータの動作原理,電源技術,モバイル通信技術など幅広い知識スキルが必要になる.

SDNは,ネットワークの構成変更やリソースの追加を,ハードウェアの個別設定や機器に依存することなくソフトウェアで実現する技術である.これらにより,保守や運用の効率化を図ることができるようになったが,保守や運用の担当者にとっては,従来のハードウェアソフトウェアのスキルに加え,より深い保守運用のスキルを身に付ける必要が出てきている.


8-2 IoTの契約形態

バイスのバックエンドで,サーバーストレージネットワークなどを用意し,さらにデータを収集,加工,出力するデータ統合のためのシステム,統合したデータを分析,可視化するデータ分析のためのシステムなどを稼働させ,出力結果を利用者に提供する.これらが新しい価値の創造となり,利用者顧客に提供するサービスになる.

p320 契約形態の種類

(1)定額契約

1つのサービスに対し,1つの価格を設定する方式である.

(2)従量契約

顧客の利用度合いに応じて,料金が決まる契約である.

(3)サブスクリプション

サブスクリプション方式は,使用する期間を切って料金を決定する契約である.1ヵ月使っていくら,1年使っていくらという契約になり,IoTシステムのレンタル契約になる.

(4)レベニューシェア

あらかじめ定めた目標をクリアすることで,その利益の一部を徴収する契約である.「システムの導入によって効果があった分の一部をお支払いください」というモデルである.

(5)フリーミアム

基本的なサービスや製品は無料で提供し,さらに高度な機能や特別な機能について料金がかかるという契約である.フリーミアムはフリーとプレミアムから作られた造語である.フリーミアムはソフトウェアの販売でよく見られる.


8-3 匿名化

p322 匿名加工情報

個人情報保護法では,2015年9月に改正法が公布され,ビックデータの有効活用狙いとして,新たに匿名加工情報に関する規定が取り入れられた.匿名加工情報とは,第2条第9項で「特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって,当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう」と規定している.

第36条:匿名加工情報の作成に際しては個人情報保護委員会規則で定める基準に従うこと,当該情報の漏洩を防止するための安全管理措置を講ずること

第37条:匿名加工情報を提供するときは,あらかじめ匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目等を公表すること

第38条:匿名加工情報を他の情報と照合してはならないこと

第39条:匿名加工情報取扱事業者は安全管理措置を講じ,それを公表すること

p322 匿名化技術

匿名化技術とは,データの利用価値を損なうことなくプライバシーを確保する技術であり,データの利用目的や,データの種類,特性に応じて,匿名化に適応する技術を選択する.データの匿名性を評価するパラメータとしてk-匿名性がある.同じ属性を持つデータがk個以上存在するようにデータの変換や属性の抽象化などを行い,個人が特定される確率を低減することを「k-匿名性を満たす」と呼ぶ.kの値が大きいほど個人を特定できる確率は低くなる.また,個人の特定をより困難にするために,データ属性をl種類以上用いたり(l-多様性),データ分布の偏りを小さくする方法(t-近接(近似)性)なども考案されている.


8-4 BCP(Business Continuity Plan)

BCPとは,事業継続計画と訳される.これは,災害や事故,疫病の流行,社会的な混乱,自社内の事故などにより,通常の業務ができなくなるような事態になったときに,事業継続のため,業務の復帰を短い期間で実施する計画をあらかじめ策定しておくことを意味する.

想定される事故として,大災害としては地震や豪雨による洪水,大規模停電や大規模火災の発生,サイバー攻撃を含めたテロ,インフルエンザなどの感染症の流行,大規模な個人情報の漏洩などが考えられる.

IoTでは,不測の事態に対し,データのバックアップ,システムの二重化などを行い,すぐに復旧できるようにデータを保持する体制が必要である.


8-5 CCライセンス

著作権の扱いについて一定のルールを設けたものがCCライセンス(Creative Commonsライセンス)である.

CCライセンスはインターネット時代の新しい著作権ルールとして,あらかじめ著作者が著作物に利用許諾に関する意思を表示しておくことで,利用者が利用の都度,著作者の了解を得ることなく利用できる仕組みである.CCライセンスを利用することで,著作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ,利用者はライセンス条件の範囲内で著作物を複製したり,再配布をすることができる.

CCライセンスで著作権を利用するための条件には,次の4種類がある.

(1)表示(BY):原作者のクレジット(氏名,著作物のタイトルなど)を表示する

(2)非営利(NC):営利目的での利用をしない

(3)改変禁止(ND):元の作品を改変しない

(4)継承(SA):改変した場合,元の作品と同じライセンスで公開する

CCライセンスは,2002年に米国の法学者ローレンス・レッシグを中心とするメンバーによって発表されたオープンライセンスである.

参考

IoT技術テキスト第3版

【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問

https://www.gg-sikau.com/?p=325

IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用

https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81

難なく MCPC IoTシステム技術検定試験(中級) に合格したい

https://cutnpaste.hatenablog.com/entry/2017/12/03/193809