第2章 IoTシステムのコンピューティング技術
2-1 クラウド/エッジコンピューティング
p20 IoTシステム構成
フィールド領域とインフラストラクチャ領域はWANで連携される.
IoTデバイスやIoTゲートウェイ間の通信には,無線PAN近距離無線(無線LAN,ZigBee,Bluetoothなど),有線LAN,PLCなどが使われる.
WANには,3G,LTE,WiMAXなどの移動体通信ネットワークや,固定系ネットワークが使われる.
p21 IoTゲートウェイの機能
中継処理
・データの集約
・送信タイミングの調整
・フィルタリング処理(ノイズ除去など)
・エッジコンピューティングによるデータ処理
負荷分散
処理内容によって,処理をクラウド側,エッジ側に分散させる.
リアルタイム処理
自動走行車の制御などのリアルタイム処理
p22 クラウド/エッジコンピューティング
クラウドネットワーク上のコンピュータリソースを必要に応じて利用し,生産性向上,コスト削減,データ管理の効率化を図る.
エッジコンピューティング
伝送遅延を抑えるため,ネットワーク上のユーザの近いところで処理を行う.
2-2 IoTゲートウェイ
p24 接続形態
直接接続
IoTデバイスをIoTサーバに直接接続する時,IoTデバイスは複数のIoTサーバと通信をするのがスペック的に難しいときもある.さらに,IoTサーバはつながったIoTデバイスを全て管理する必要があるので大変.
IoTゲートウェイ経由接続
直接接続の課題を解決する.
IoTデバイスが収集したデータを集約することで,通信上の負荷を軽減できる.
通信を終端することで,不正アクセス防止にもつながる.
IoTエリアネットワーク内の通信プロトコルとWANの通信プロトコルの変換を行う.
p26 OSGi
OSGiはAllianceによって標準化されたJavaベースのソフトウェアコンポーネントらしいがよくわからんのでパス.
p27 プロトコル変換
IoTネットワークとWANでは使う通信プロトコルが異なるため,変換が必要である.
IoTエリアネットワークの通信では低コスト,低消費電力を求めるため,6LoWPAN,CoAPを使うと嬉しい.TCP/IPとの互換性も高いのでさらに嬉しい.
WANではTCP/IPを使うことが多い.
2-3 クラウドコンピューティング
p29 クラウドサービスの形態
IaaS
コンピュータシステムの環境を提供.
PaaS
IaaSをベースに,データ収集,分散処理,保存などのサービスを提供.
自分で用意できなさそうな部分をサービスとして利用する.
SaaS
データ処理はPaaSに任せて,データ利用のためのアプリケーションは自分で作成したり,提供されるソフトウェアを使う.
BaaS
IoTアプリケーションのバックエンドに必要なサービス(データ保管,プッシュ通信,ユーザ管理,SNS連携など)を提供し,IoTアプリケーションからAPIで呼び出す.
p30 パブリック/プライベートクラウド
パブリッククラウド
プロバイダが提供するクラウドコンピューティング環境であり,不特定多数のユーザがインターネットを通じてサービスを利用する.
プライベートクラウド
ある企業にだけパブリッククラウドを切り出し,高度なセキュリティポリシーを適用するなどの自由度の高いシステム構築に向いた形態.
中でも,企業が独自にサーバを所有し,企業内に構築するプライベートクラウドをオンプレミスという.
2-4 エッジコンピューティング
クラウドコンピューティングは伝送遅延がネックとなるため,エッジコンピューティングの考え方が考案された.
エッジコンピューティングは伝送遅延を抑えるため,ネットワーク上のユーザの近いところで処理を行う.
メリット
近くのサーバなどに処理の一部を肩代わりさせることで,その分高度なアプリケーションを動作させるリソースが生まれる.
クラウドへのデータ伝送を省略することで,ネットワークトラフィックを削減可能.
p33 エッジコンピューティングの活用
oneM2MのVehicle Data Collection Service(エッジコンピューティングを車両に導入)
Edgecrossコンソーシアムは2017年に設立が発表された団体で,ITシステムとFA(Factory Automation)の連携を図ることを目的とする.
ファナック株式会社は,2017年にFIELD systemと呼ばれるIoTとFAの連携をうたうプラットフォームをリリースした.
p36 エッジAI
大規模データ処理などの大量のコンピュータパワーを必要とする環境はクラウド上でしか構築できなかったが,自動走行車などの分野ではリアルタイムなAI分析が必要であり,エッジ側でAIを実行する考え方が生まれた.
要件として,インターネットに接続できない環境や,サーバ接続ができない環境下でのエッジ側のみでの稼働がある.
上記の実現のためには,以下があげられる.
(1)AI分析モデルを実行可能なハードウェア拡張
GPUを組み込む,分析処理に特化したアクセラレータを組み込む,エッジAI向けSoCを組み込む,などがある.
(2)学習済みモデルのエッジ側への組み込み
クラウドで作成した学習モデルをエッジで使用する.
(3)FPGA(Field Programmable Gate Array)の活用
単純な処理の繰り返しをFGPAに専用の論理回路(VHDLやVerilogなどで記述)に組み込む.
論理回路設計を間違えても現場で修正可能なのが特徴であり,開発コストを抑えたり,開発リスクを低減できるメリットもある.
2-5 データ駆動型システム
p39 CPS(Cyber Physical System)
現実世界のセンサデバイスなどが生み出すデータを,仮想世界で処理することで価値を創出する考え方.
Physical空間のセンサなどで集めたデータをゲートウェイなどを経由してCyber空間のサーバで処理をし,Physical空間にフィードバックする.このような動きは,「データ駆動」に基づくシステムの機能といえる.
p41 Industrie4.0
ドイツ政府が推進しており,ドイツ製造業の高度化を目指す戦略的プロジェクトである.ICT,IoT技術を駆使した製造業の革新を目指している.
基本はCPSをベースとして製造業を強化することで,工場の稼働状況をリアルタイムに把握し,他の工場との連携などを含めたバリューチェーン全体にわたって効率化を図る.
p41 デジタルツイン
Physical空間が生成するデータをもとに,Cyber空間上に仮想的な製品製造を行うシミュレーション環境を構築する.デジタルツインのシミュレーションにより,Physical空間の各種データはどのような動きをするのか,どのような影響を周辺機器に与えているかなどを予測できる.
p42 IoTサービスプラットフォーム
IoTサービスは,サービス分野ごとに特殊な固有サービス機能(IoTアプリケーション)と,サービス分野に依存しない共通機能に分けられる.
IoTアプリケーション
(1)フィールド領域
センサ,アクチュエータを含むIoTデバイスや,複数のIoTデバイスを集約するIoTゲートウェイが含まれる.
(2)インフラストラクチャ領域
IoTデバイスからのデータの集約,分析,あるいはIoTデバイスを制御するサーバやクラウド部分を指す.
(3)下位層ネットワーク
フィールド領域とインフラストラクチャ領域を連携させる.
p43 垂直統合型と水平連携型
(1)垂直統合型
分野ごとに単一のIoTアプリケーションとそれにかかわるIoTゲートウェイ,IoTデバイスが接続され,エンドツーエンドでのサービス提供が行われる.IoTシステムにおいて共通する機能を毎回実装する必要があり,コストがかかるという欠点がある.
(2)水平連携型
IoTシステムにおける共通機能はプラットフォームとして提供し,IoTアプリケーションはこのプラットフォーム上で個別に構築する.共通機能の構築コストを抑えられるだけでなく,異なるIoTアプリケーションが収集したデータを共有できるメリットもある.
共通機能
(1)データ収集
(2)データ蓄積
収集したデータを蓄積する.
(3)データ可視化・分析
収集,蓄積したデータを可視化したり,データの相関分析や特異点検出を行う.
(4)遠隔制御
IoTデバイスからの指示やデータ分析の結果に基づいて,IoTデバイスに接続されたアクチュエータを駆動させるための制御コマンドを送信する.
(5)イベント通知
IoTデバイスが検知した状態変化や取得したIoTデータをIoTアプリケーションに通知する.
(6)デバイス管理
IoTデバイスの位置や接続方法,状態を管理したり,IoTデバイスのファームウェアをアップデートする.
(7)アプリケーションインターフェース
様々なIoTアプリケーションからIoTサービスを利用できるように,インターフェースを提供する.
p45 データ収集の方法
(1) アップロード方式
IoTデバイスまたはIoTゲートウェイが主導となり,IoTサービスにデータをアップロードする.アップロード方式はさらに以下の3つに分類される.
(a)逐次収集方式
IoTデバイスでデータが発生した都度,または定期的にIoTサービスにデータをアップロードする.
リアルタイムにデータを収集することが可能である反面,データサイズに比べて通信ヘッダが大きくなり,ネットワーク負荷が増大する.また,計測したデータを全てサーバに蓄積するため,ストレージコストもかかる.
(b)一時蓄積方式
IoTゲートウェイにデータを一時的に蓄積しておき,一定時間ごとにまとめてIoTサービスにアップロードする.
ネットワーク負荷を軽減できるが,リアルタイムなデータ収集には向いていない.また,ストレージコストはかかる.
(c)区間集約方式
IoTゲートウェイで蓄積したデータの集約のみをIoTサーバにアップロードする.
ネットワーク負荷とストレージコストの両方を解決するが,リアルタイムなデータ収集には向いていない.
(2) ポーリング方式
IoTプラットフォームが主導となり,IoTデバイス/ゲートウェイからデータを取得する.
IoTアプリケーションが必要とするタイミングでデータを収集できる.また,IoTデバイスが非常に多くても,IoTアプリケーションが順番にデータ収集をするので,ネットワーク負荷やサーバ負荷をおさえられる.
しかし,リアルタイムなデータ収集には向いていない.
(3) パブリッシュ・サブスクライブ方式
あらかじめIoTアプリケーションが必要なデータのトピックをsubscribeすることをIoTゲートウェイに伝えておく.IoTゲートウェイは,IoTデバイスからpublishされたデータを,そのデータをsubscribeしているIoTアプリケーションに送信する.
p47 遠隔制御
(1)直接制御方式
IoTサービスプラットフォームが必要とするタイミングで遠隔制御要求をIoTゲートウェイに送信し,応答を受け取る.
IoTデバイスを即座に制御できるが,不正操作防止のアクセス制御などが必要.
(2)ポーリング方式
IoTゲートウェイは定期的にIoTプラットフォームに遠隔制御要求の有無を照会する.要求があれば,それを取得し応答する.要求がなければ,一定時間後(ポーリング間隔)に再度照会する.
安全性は高いが,要求の応答性はポーリング間隔に依存する.
(3)ロングポーリング方式
IoTゲートウェイはIoTプラットフォームに遠隔制御要求の有無を照会する.要求がなければ,IoTプラットフォームで要求があるまで待機する.
安全性と即時性をともに満たすが,IoTゲートウェイが多く接続されるシステムではサーバ負荷が問題となることもある.
(4)双方向通信方式
双方向のプロトコルを使用することで,IoTサービスプラットフォームとIoTゲートウェイのどちらからでも要求を出せる.
XMMPで遠隔制御を実現することも可能である.
(5)ウェイクアップ方式
通常はスリープ状態にしておき,信号のやり取りで機器を起動させる方式.遠隔制御の際にはSMSなどで信号をやり取りする.
ネットワーク負荷の軽減につながる.
参考
IoT技術テキスト第3版
【MCPC】第6回IoTシステム技術検定のうろ覚え過去問
https://www.gg-sikau.com/?p=325
IoTシステム技術検定中級 テキスト第2版抜粋 音声読み上げ用
https://qiita.com/sxnxhxrxkx/items/bda596a4a6abc2504385#%E7%AC%AC1%E7%AB%A0-iot%E6%A6%82%E8%A6%81
難なく MCPC IoTシステム技術検定試験(中級) に合格したい